四柱推命によって命運を論じるには、生年月日だけでなく、出生時刻も正確に分かっている必要がある。出生時刻が不明のまま、年・月・日の3柱のみで命運を論じることは不可能である。日本では出生時刻が不明であってもかまわないという、四柱推命ならぬ三柱推命を多く見かける。生まれた時刻までは記憶していない人が多いので、一人でも多くのお客を獲得するためにそうした方法が採られているのであろう。年月日時の四つのうち三つがわかっていれば、75%の精度があると考えられる方もいらっしゃるかも知れないが、それはまったくの誤りである。たとえて言えば、4本電池が必要なのに、三柱推命では3本しか電池がない状態で話を始めようとしているのである。
本場の中国や台湾にも怪しげな四柱推命はあるが、それでも三柱推命などというものはないようである。日本には四柱推命の専門家の中にも「生まれた時刻はわからなくても大丈夫です」と言って、三柱推命で人の命運を見ている方がいる。まったく手の施しようがない状況である。では生まれた時刻が不明の場合、四柱推命で見ることができないかというと、まったく方法がないわけでもない。そうした方の場合は、少々手間はかかるが、その人の現在と過去に起こった事柄をもとにして、出生時刻を推定することになる。
さて、日本では昭和14年頃から発行されている母子健康手帳に出生時刻を記入する欄があるため、出生時間が不明であることは大変少なくなっている。また、最近では時計が5分も10分も狂っていることはほとんどなくなり、母子健康手帳に記されている出生時刻も信用が置ける場合が多くなっている。しかし、医師、あるいは助産師の方が母子健康手帳に出生時刻を記入する際に見る時計は、日本中央標準時を示すものであって、太陽の位置によって定められる真太陽時を示していない。
四柱八字は太陽の位置によって定められる「真太陽時 」をもとにして出さなければならないので、四柱八字を出す際、時計が示す時刻と真太陽時とのズレを補正する必要がある。
こうしたズレの補正が必要になったのは近代になって標準時が採用されたためで、それ以前の太陽そのものや日時計を見て時刻を定めていた時代にはまったく必要ではなかった。中国でこの点が考慮されるようになったのは近年のことで、20世紀中期に活躍した台湾の呉俊民氏の著書「命理新論」が、最古の書であろうと思われる。
さて、日常使用している時計の時刻、すなわち日本中央標準時と真太陽時に差が発生する原因には二つある。―つは、出生地が中央標準時の基準である、兵庫県の明石市を通る東経135度から離れていることに起因する。テレビ、電話の時報で知ることのできる日本中央標準時は、東経135度上の時刻で、政治・経済上の都合により定められた共通時なのである。
もう―つの原因は、地球の公転軌道が楕円形であることから生じる。これは均時差と言われており、季節によって変動し、最大でプラス・マイナス15分程度の差を生じる。
次に、この2点について説明し、誕生時の時刻を真太陽時に補正する方法を理解していただくことにする。
ただ、東京都内の生まれの場合、この真太陽時と日本中央標準時の差は最大になっても34分ほどであり、大阪の場合は19分ほどである。これらの時差を考慮してもしなくても時刻の干支、また蔵干に変わりがない場合も多いとは言える。
なお、この節と、「四柱八字の出し方」「大運の出し方」の内容は、インターネットを通して無償で提供しているソフトウエア「四柱八字表示(準拠版)」ですべて自動的に処理することができる。したがって、計算が面倒なところは概略を理解するのみで十分で、読み飛ばして先へ進まれても いっこうにかまわない。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より