四季の変遷は五行の旺(王ということもある)の変遷として記述される。旺の字義は、「日光が盛んに広がるようす」であり、この字義からも四季の認識と日差しの強さとの関わりを見ることができるが、陰陽五行論では、それぞれの季節をつかさどり、旺じている五行は、その時期もっとも質的に充実している状態であると考えられている。
四季と五行の旺の関係は次のようになる。
春には、木が旺じる。
夏には、火が旺じる。
秋には、金が旺じる。
冬には、水が旺じる。
そして、季節の変わり目の前には、土が旺じる。
とされている。季節の変わり目とは、立春、立夏、立秋、立冬(この四つを四立という)の前の約18日間のことで、この期間を土旺と言う。『理科年表』には、土用という名称で表示され、四立の前の黄経上18度の期間として定義されている。この五行と四季の関連については、秦の時代に成立したとされている『呂氏春秋』の「十二紀」に、すでに詳細な記述を見ることができる。
また、節月と旺の関係を示すと、次のようになる。
〈春〉寅・卯・辰月は、木が旺じる。
ただし、辰月の後半の約18日間は土旺となる。
〈夏〉巳・午・未月は、火が旺じる。
ただし、未月の後半の約81日間は土旺となる。
〈秋〉申・酉・戌月は、金が旺じる。
ただし、戌月の後半の約18日間は土旺となる。
〈冬〉亥・子・丑月は、水が旺じる。
ただし、丑月の後半の約81日間は土旺となる。
土旺は、他の4行とは異なる様相を呈しているが、「五行大義』には、四季と土旺について次のように言われている。
《『龜経』にいう、「土は、木が動いて辰土となり、火が動いて未土となり、金が動いて戌土となり、水が動いて丑土になる。」と。》
また、《およそ五行の旺は、おのおの七十二日。土は四季の末の十八日に居す。》
とあって、1年を360日として、五行の5で割り、各行の旺じる日数を求めると72日。土旺は年4回あるので、72をさらに4で割った18日が、その旺じる日数とされているのである。また、同書に、《『禮記』にいう、「中央は土であり、季夏の後にあり、これすなわち年のなかば、四時の中央に居す」と。》とあり、干支暦では1年は寅月から始まるため、未月(7月頃)の土旺の時期が1年の折り返し点となることから、土が最も盛んであると言われているのである。そのためかどうかは不明であるが、暦の上では土旺は年4回あるにもかかわらず、未月の土旺の期間の丑の日のみが、「土用の丑の日」として、ウナギを食べる習慣があることで今も広く知られている。ちなみに、土用の丑の日は、江戸時代の蘭学者平賀源内が、知人の鰻屋の客寄せ目的で始めたことが、その始まりであるという説がある。ただし、未月の土旺が1年の折り返し点であるとしても、他の土旺の時期と比較して、土が盛んであるということはまったくない。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より