武田邦彦「ホントの話」第114回を観る
報道の裏を読む — 展望力をつけるために
武田邦彦「ホントの話」第114回を観る
2022年7月29日放送 — 米サウジ会談から日本人のルーツまで
この回の話題は米サウジ会談から日本人のルーツまで多岐にわたりますが、通底するのは一つのメッセージです——報道や通説をそのまま信じるのではなく、その背景と事実から自分の頭で判断する力を持つこと。武田先生の言う「展望力」をどう養うか。十二の話題を通して、その手本を示した回でした。
1 米・サウジ首脳会談とエネルギー情勢の裏を読む
アメリカのバイデン大統領がサウジアラビアを訪問し、サルマン国王・ムハンマド皇太子と会談した。石油増産の確約は得られなかったが、武田先生はこのニュースを「背景」から読むよう促す。先生の見方では、ウクライナ戦争は本質的にアメリカが仕掛けた戦争であり、ロシアは原油・天然ガスの大産出国だから、戦争で供給が滞れば世界的に価格が高騰する。その責任の一端はアメリカにある——だからこそバイデン大統領はサウジへ増産を求めに行かざるを得なかった、という筋立てだ。国際情勢は道徳とは別の論理で動く。そこを切り分けて見なければ、かつての大東亜戦争のような誤りを繰り返す、と先生は説く。
2 参院選——若者の自民離れが意味するもの
参院選で自民党は単独過半数を得て大勝したが、三十歳未満の自民投票は四割を切った。武田先生は、自民党が若者向けの具体的な政策を出さなかった結果だと分析する。百年人生のなか、これから七十年を生きる若い世代に、将来が明るく見える仕事や生き方を示せなかった。若者をファッションや漫画で釣れると侮ってはいけない、若い人も将来を真剣に考えている、と先生は釘を刺す。
3 安倍元首相の国葬をどう考えるか
武田先生はまず「国葬とは何か」を問う。本来それは国民全員が喪に服す——黒い服を着る——ことを意味する。吉田茂が国葬とされたのは、新生日本を独立させた功績ゆえだった。安倍元首相については、在任中に野党やマスコミが森友・加計・桜の問題で人格を問い、その間に国民が期待した憲法改正の論議が進まなかった経緯がある。「人格に問題がある」として審議を止めたのは野党と主要マスコミ自身ではなかったか。その整理をつけてから国葬を行うべきだ、というのが先生の慎重論である。
4 政治と宗教は分離すべきか
公明党と創価学会の関係をめぐる問いに、武田先生は「宗教を信じる人が政治に関与してはならない、ということはない」と答える。宗教は心の問題、政治は現実の問題であり、両者は区別できる。先生はイエスの言葉「神のものは神に、カエサルのものはカエサルに」を引き、二千年前にすでに結論は出ていると説く。ドイツのキリスト教民主同盟の例も挙げ、信仰や信仰団体に属することが政治参加を妨げるものではない、と論じる。
5 家族が新興宗教にハマったら——問うべきは社会の側
身内が怪しげな団体にはまったらどうするか、という質問に、武田先生は視点を裏返す。問うべきは個人ではなく、その人がそこへ向かわざるを得なかった社会の側ではないか、と。先生はパチンコ依存を例に、狭い住まいで幼子と一日中向き合い、逃げ場のない人にとって、それが唯一の憩いになっている現実を語る。タバコもまた、三割の人にとっては頭を整理する拠り所だという。頭ごなしに否定するのではなく、辛い人を楽にする、もっとまともな営みを社会はつくれないか——宗教の原点もそこにある、と先生は問いかける。
6 朝日新聞の記事削除問題——報道の歪みを見抜く
社会学者のインタビューから核心部分が削除された件を、武田先生は「極めて重要なニュース」と評する。マスコミは取材対象の名前だけ使い、自分たちの主張の道具にする構造がある、と。先生は自身の体験を率直に語る。リサイクル批判の発言が、望む答えが出るまで何度も撮り直しを求められ、結局使われなかったこと。原発に関する発言が放送方針と違うとして放送されず、交通費すら出なかったこと。「言った通りが出る」——だからこそ自分の名で番組をやる意味がある、と先生は結ぶ。
7 「パンは胃腸に良くない」——食は民族の体質とセットで
ある医師が「パンは胃腸に良くない」とする記事を出したことを、武田先生は「よく出した」と評価する。巨大スポンサーに不利なことは普通言えないからだ。そのうえで先生は、食を民族の体質とセットで考えるべきだと補足する。ヨーロッパは肉・パン・酒、日本は魚・米・味噌というセットで成り立ち、消化酵素も酒の強さも生まれつき異なる。だから一律に「パンは悪い」「牛乳は悪い」とは言えず、地域と体質に応じて見るべきだ、という。
8 大崎市の水害——「観測史上最大」という言葉の罠
宮城県大崎市の水害をめぐり、武田先生は「観測史上最大」という表現の不正確さを指摘する。実際にはその地域に三十年ほど前に設置されたアメダスの記録のうちで最大、という意味にすぎない。それを「観測史上最大」と言えば、地球規模で前例がないかのように受け取られてしまう。そもそも水害は治水で防ぐもので、武田信玄の信玄堤の例を引き、為政者が備えれば繰り返さない、と説く。温暖化のせいにして思考を止めるな、というのが先生の主張だ。
9 貿易赤字は本当に悪いことか
上半期の貿易赤字が過去最大となった。だが武田先生は「赤字は必ずしも悪いことではない」と説く。世界は一つの経済圏であり、日本が黒字を出せばどこかの国が赤字になる。欧米の輸出強国でも累積黒字はおよそ三十兆円規模なのに、日本は四百兆円ほどに達し、突出している。これは国民を痛めて溜め込んでいる状態に近い。適度な赤字はむしろ健全な方向だ、というのが先生の見方である。
10 日本人の意地悪さと経済低迷——「節約礼賛」への批判
「日本経済低迷の元凶は日本人の意地悪さ」とするニューズウィークの記事を紹介しつつ、武田先生は現代日本の「節約礼賛」を批判する。所得四百六十万円の人は四百六十万円しか使えない。節約とは消費を減らすことであり、それは経済を縮小させる。さらに先生が最も醜いと指摘するのは、自分は二倍・十倍と使いながら他人に節約を求める偽善だ。アメリカのゴア元副大統領が節電を訴えながら自宅の電気代が桁外れだった例を引き、つじつまの合わなさを突く。
11 海洋酸性化——危機を煽る手法に注意
NHKの「海洋酸性化」をめぐる番組を、武田先生は批判的に検証する。地球には酸性物質を中和するアルカリ性物質もあり、CO2が増えれば生物の殻がすべて溶けるわけではない。地質時代にはCO2濃度ははるかに高く、それでも殻を持つ生物は栄えていた。先生は、潮の干満差が極端に大きい場所だけを撮るなど、危機を視覚的に煽る報道手法の例を挙げ、断片を切り取って全体の危機に見せる構図に注意を促す。
12 日本人のルーツ——中国渡来説への疑問
日本人と中国人は、遺伝子も言語も文化も大きく異なる。武田先生は、日本人が中国から渡来したのではなく、むしろ南方・海の側から来たのではないかと考える。日本には世界最古級の石器時代の遺跡が数多くあり、戦いの少ない豊かな環境ゆえに、大きな国家を形成する必要がなかった。だから一見「文化が遅れて」見えただけだ、と。縄文期に陸地だった海底の発掘が進めば、新しい歴史が見えてくるかもしれない——科学者は過去の主張に固執しない、と先生は前向きに語る。
むすびに
締めくくりに武田先生は、批判ばかりの人より、失敗しても前を向く陽気な人こそが物事を成す、と語った。明るい人を上に立てる社会を——その一言に、この回を貫く前向きさが表れている。
※本記事は番組での武田邦彦先生の発言を、自動文字起こしをもとに論旨を整理して紹介したものです。各見解は武田先生のものであり、内容には世間の通説と異なる主張も含まれます。
出典:武田邦彦「ホントの話」第114回(2022年7月29日放送/友達TV)
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