第42話 応援団
ある日、上司に呼ばれた。
「応援団をやってみないか」
唐突だった。生産計画の仕事とは、何の関係もない話だった。
後でわかったことだが、その上司は組合の幹部でもあった。村山工場には団結意識が強く根付いていた。毎年、青年体育祭が三ツ沢公園で開かれ、各工場が応援合戦を繰り広げる。村山工場として、本気でやりたいということだった。
断る理由がなかった。というより、断れる雰囲気でもなかった。
私は応援の企画を任された。
どんな出し物にするか。どういう順番で見せるか。何人必要か。生産計画を組むのとは違う種類の段取りだったが、やることは似ていた。全体を見て、流れを作る。
問題は練習時間だった。工場には夜勤者と日勤者がいる。全員が集まれる時間は限られていた。夕方の短い時間に、両方が顔を合わせられる合同練習の場を設けた。
最初はばらばらだった。
声が揃わない。動きが合わない。恥ずかしがって声を出さない者もいた。それでも回を重ねるうちに、少しずつ変わっていった。
工場の仲間というのは、不思議なものだった。毎日同じ場所で、同じ機械の音を聞いている。それだけで、何かが通じ合っていた。
本番の三ツ沢公園、村山工場の応援団は優勝した。
その後、現場を歩くたびに声がかかるようになった。「おっす」と。それだけだった。それだけで十分だった。なんとなくこそばゆく、しかし悪くない気分だった。
仕事とは関係のないところで、工場に居場所ができた気がした。
(つづく)R080420

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