このバーゼル条約の問題を突き詰めると、リサイクル社会と国際貿易の基本的矛盾に突き当たります。現在の国際貿易が世界の経済発展に大きな貢献をしているのは議論の余地がないでしょう。また貿易は環境という点でも貢献しています。
資源のあるところでできるだけ精製したり加工することは輸送エネルギーを小さくするというメリットがあります。無駄なものを一緒に運ぶより、相手の国で使うものだけを運ぶことができるからです。
また技術的に優れた国が生産を分担したり、世界で少ししか使わないものをある国のある会社が分担して集中して製造するのは環境的にも優れているからです。事実、日本の中小企業の中には優れた技術を持った会社が多く、「うちの会社のこの製品は世界の七〇%のシェアーを持っている」ということを誇りとして製造に励んでいるところが多いのです。
しかし、リサイクル社会を構築すると、このような国際貿易はかなり大きな打撃を受けます。最初は資源の産出国が資源を産出してそれを精製し、台湾に送ったとします。台湾は電子産業が盛んで特にコンピューク用のマザーボードなどは世界のほとんどを押さえているといってもよいほどです。そこでマザーボードが製造され、韓国に送られたとします。またハードディスクはアメリカのIBM社のものが一番性能が良くて安価なのでそれを使ってコンピュークが韓国で組み立てられ、日本に輸入されたとします。このように「多国籍部品」を使って製品を組み立てる方法は今後ますます盛んになると思います。
さて、多国籍部品を使って製造されたコンピュークを五年ほど使って廃棄物としてリサイクルに回すとしたら、どの国に回すのでしょうか?
日本で購入した人は、そのコンピュータを分解してマザーポードは台湾、ハードディスクはアメリカ、そしてキャビネットは韓国に送るのでしょうか?
それぞれにある程度の有毒物が入っているのでバーゼル条約で越境が禁止されます。かといって、日本には適切なマザーボードやIBM形式のハードディスクのメーカーがありません。
それではそこに使われている材料を取りだそうとしてもキャビネットに使われている鉄板は回収できますが、後はあまりにも他種類の材料があまりにも細かく使われているのでとても材料を回収することができません。
このように「リサイクル社会」と「国際分業や国際貿易」はもともと矛盾しているのです。現在の工業界がこの矛盾をどのように解決しようとしているのか、これも著者がここ数年、質問してきたのですが、大きな会社もさっぱり解答がありません。
もともとリサイクル自体がムリなことなので解答がないのは仕方がないのですが、それでも「リサイクルする」といっているのが不思議です。
著者は資源の国際移動と人工鉱山によりこの矛盾を解決することを提案します。
『リサイクル汚染列島』(青春出版社)武田邦彦著より
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