アメリカ政府・軍の中枢はどうだったのでしょうか。単純なことではありませんので、本文(第七、八章)に譲るしかありません。FDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)という大統領名が、今のアメリカの知識人層の中では一種のタプー視されている雰囲気について、触れる日本の言論人は稀です。ルーズベルト政権の正体というか悲惨な内実については、アメリカのインテリたちが肩をすくめる度数はますます増える一方です。
真珠湾を日本は騙し討ちしたとか、日本が支那事変を始めたとか、そして日本はコミンテルン製の偽書「田中上奏文」に見るがごとく、アジア征服に血道をあげたなどというレベルの「歴史認識」は克服すべきです。
日本が本当に反省すべきなのは、日本は国の進むべき道を確かな「日本生存の意志」のもとで確定できなかったという日本の視力の弱さです。これに触れて、本文に進みます。
この弱さが、露呈したのがソ連仲介の降伏構想でした。支那事変の合言葉は「聖戦完遂」でした。そして「高度国防国家建設」でした。やがて「一億玉砕」となります。一億玉砕というのはソ連軍の進撃を待つという意味を秘めていました。かろうじて残っていた日本の理性がこれを回避しました。
一九四五(昭和二十)年四月十二日にルーズベルト大統領は急死しました。日本は決して純粋無垢な正義のみの国家ではありません。けれども悪党国家ではありません。マッカーサーが「日本は十二歳」と言い、日本人は憤慨しましたが多分に誤解です。ドイツは成人の悪党だったが、日本人はそうではなかったという反省の弁なのです。確かにそうだったに違いないと、私は考えます。ソ連の日本侵攻を期待した日本人たちは口をぬぐって、今の日本の言語空間を支配しています。これの露頭部が、靖国神社のA級戦犯の合祀問題です。中韓両国がこれを取り上げるのは、日本人の仲間が騒ぐからです。彼らのことを拙著で私は「反日劣情日本人」と表現しておきました。別称「敗戦利得者」です。
世界でこの二国の他に、どの国が靖国神社・A級戦犯合祀を問題視しているのでしょうか。この二国がこれを言えば騒ぐ「反日劣情日本人」が政局にするからです。
慮溝橋事件を始め、支那事変拡大を仕組んだのは世界共産党(コミンテルン・中国共産党はその支部)であり、中国共産党からまんまと乗せられた東条英機たちを、中国共産党はまだ追撃しているのです。同志の日本人が同調するのは当然です。
日本人は、敗軍の将といえども「カミ」はそれとして鎮魂します。日本には、平将門など敗軍の将の「カミ」は無数です。政争の敗者についても同じです。墓を暴くことは日本人はやりません。これは日本の文化であり、日本人の誇りでもあります。敗軍の将として敵国から処刑された日本の将たちを日本人が「カミ」として祭祀しても、日本人の魂のありようが揺らぐものではありません。
東条英機たちの命じるままに祖国のために敢闘・戦死した日本人の霊が、恨み重なる貴様らにと襲いかかるとでもいうのでしょうか。日本人が「神」とする霊格とはそんなもではない筈です。靖国の森は憎悪渦巻く杜ではありません。
人は、自分の霊格のレベルを省察すべきです。
最期の「外泊」で、乳児の私を風呂に入れてくれたと私の老母は言います。
「姉さん、俺の代わりたい」と泣いたと聞きます。
翌朝、「行ってきます」と事務的に言い、行き、逝きました。いつの頃に覚えたのか、私は三井甲之氏の歌を思い出します。

ますらおの かなしきいのちつみかさね
つみかさねまもる やまとしまねを

私は、護国の鬼となった叔父の霊が、東条英機たちを拒絶するとは、とうてい信じられません。日本の「神」と祭られた以上は、叔父は靖国神社で安らかな霊格として静まりたまひていると、私は信じます。叔父は海軍主計上等兵曹とありますから、炊事の兵隊さんでした。
こんな私事を書いたのは、日本人は真面目に国の歩みを総括すべきだという思いを述べたいからです。東京裁判のでたらめさを総括するのも結構です。やるべきです。そして、 世界に向けて発信すべきです。「南京大虐殺」のインチキを研究し、世界に結果を発信すべきです。さすが日本人だと、感動する研究成果が上げられています。
しかし、日本人はこれらの総括・研究に埋没して、何かを忘却してはならないでしょう。それは日本人のヘマの総括です。ヘマを踏んだから、未曽有の大敗戦を蒙ったのです。
靖国神社のことを、だから私は申し上げているのです。支那事変のヘマは、全く裏返しの形で、中国への土下座になっています。コミンテルンヘの対応のヘマが総括されれば、日本の土下座はあり得ないことです。 〉
韓国・朝鮮の存在は露戦争の日本勝利の賜物なのです。ただ、日本は朝鮮併合というヘマをしました。だから、満洲のヘマが続いたのです。日本人は日本人のヘマの総括を、真面目にすべきです。日露戦争百年余・終戦六十余年を無駄にしてはなりますまい。今年は上海・南京戦七十年の年です。
『続日本人が知ってはならない歴史』若狭和朋著(2007年)