〇小工業への回帰
人民に服従を仕込むために、倹約の趣味を与え、奢移品の生産を制限しなければならない。そして風俗を和らげ、豪奢の陳列から起こる競争で醸された不道徳を防止する。我々は小さな職業を奨励して工業家の個人資本を覆さなければならぬ。この点が重要であるのは、大工業家は意識してか無意識か政府に反対して人民に影響を及ぼすからである。小さな工業に分割するとストライキなどは知らなくなって、生活法則に順応し、官憲についてくる。ストライキは政府に対して大いに危険なものであるが、我々が主人となるときにはもはや問題ではなくなる。
泥酔もまた法律によって禁止し、人間の尊厳性に対する罪悪として処罰する。それはアルコールは人を堕落させるからである。
繰り返し述べるが、人民は自分とまったく別の力強い手にだけは絶対服従するものである。彼らはこれを社会の不幸の襲来に対する防御兵器とし、城砦と思うのである。
〇世界大動乱の予告
なぜ王は天使のような心を持つべきか? 人民は王を力と権威の人間化と見なしたいからである。現存する諸政府に代わるべき王は、我々が意気喪失させた社会で生活を送りつつあるが、その社会なるものは神の権威すら失墜させ、そのなかから至るところで無政府主義の炎が燃え上がりつつあるから、我々の王がまず何よりもこの猛火を消し止めることに身を投じなければならぬ。
ゆえに要すればこの社会を血の海に溺死させ、後からこれを良く編成された軍として復活させ、国家組織を害する無政府主義に対して誠実に戦わせなければならぬ。
〇神の選んだユダヤ王が動乱を鎮める
この王は神の選んだもので、悪の力を破砕する任務で、上の方から選定されたのである。
悪の力とは本能から生まれたもので、知恵から出たのではなく、動物の魂から生まれたので、人間の魂から出たのではないのである。この悪の力が今では凱歌を挙げており、自由と権利の名によって、泥棒や各種の巧妙な暴力を行使している。その悪の力が社会秩序を破壊してユダヤ王を王座に据えるのである。しかし、それらの力の役割は王が権力者の地位に就くときに用済みとなるのであって、そうなれば道の上からそれらを一掃し、藁の一片も小石一つも残っていないようにするのである。
そのとき我々は人民に次のように言う。「神に祈れ、宿命的な験を持つ方の前に平伏せよ。神はその方に自ら星を現わして、その方以外の何者もお前たちを罪と悪の力から解放することは出来ないのだ」
[定本]『シオンの議定書』四王天延孝原訳 天童竺丸補訳・解説 成甲書房