爾臣民父母に孝に兄弟に友に夫婦相和し朋友相信じ恭倹己れを持し博愛衆に及ぼし学を脩め業を習い以て智能を啓發し徳器を成就し進で公益を広め世務を開き常に國憲を重じ國法に遵い一旦緩急あれば義勇公に奉じ以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし是の如きは獨り朕が忠良の臣民たるのみならずまた以て爾祖先の遺風を顕彰するに足らん

 

と仰せられてあります。

この一段には、初に天皇が我等臣民に対して爾臣民と親しくお呼びかけになり、我等が常に守るべき道をお諭しになってあります。

其の御趣旨によると、我等臣民たるものは父母に孝行を尽くし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互いに分を守って睦まじくしなければなりません。また朋友には信義を以て交わり、誰に対しても礼儀を守り、常に我が身を慎んで気ままにせず、しかも博く世間の人に慈愛を及ぼすことが大切です。また学問を修め業務を習って、知識才能を進め、善良有為の人となり、進んでこの智徳を活用して、公共の利益を増進し、世間に有用な業務を興すことが大切です。また常に皇室典範・大日本帝国憲法を重んじ、其の他の法令を守り、もし国に事変が起こったら、勇気を奮い一身をささげて、君国のために尽くさなければなりません。

かようにして天地と共に窮ない皇位の御盛運をお助け申し上げるのが、我等の務めであります。

 

終には、以上の道をよく実行する者は、忠良な臣民であるばかりでなく、我等の祖先が残した美風を表す者であることをお諭しになってあります。

『国民の修身』監修 渡辺昇一