隣近所同志互に親しくして助け合ふことが、共同の幸禍を増す上に必要なことは、いふまでもありません。それと同様に國と國とが親しく交り互に助け合つて行くことは、世界の平和、人類の幸幅をはかるのに必要なことです。今日各國互に條約を結び、大使・公使を派遣して交際につとめてゐるのも、主としてこれがためであります。
明治天皇は、諸外國との和親について非常に大御心をお用ひになりました。明治四十一年に天皇の下し賜はった詔書の中にも、益國交を修めて列國と共に文明の幸禰を樂しまうと仰せられてあります。
歐洲大戦の終に平和會議がパリーで開かれた時、我が國もこれに参加しました。この會議の結果、出来上ったのが平和條約で、将来世界の平和に大切な國際聯盟規約はこの條約の一部です。この條約の實施された大正九年一月十日に、大正天皇は詔書を下し賜はつて萬國の公是によって平和の賓を學げ我が國力を養つて時世の進歩に伴なふやうに勉めよと國民にお諭しになりました。
今上天皇陛下は皇太子であらせられた時、歐洲諸國を御巡歴になりました。半年の間、陛下は到る處の國々で御交際におつどめになり、いつも非常に好い感じをお輿へになりました。これがため各國との和親がどれ程增したかはかり知られません。
我等も國交の大切なことを忘れず、つとめて外國の事情を知り、外國人と交際するに當つては、常に彼我の和親を增すやうに心掛けませう。
『国民の修身』監修 渡辺昇一
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