人が團體をなして生活するには、誰も守らなければならない規則が必要です。もしかやうな規則がなく、めいめい勝手氣まゝなこどをしたら、とても一しよに生活するこどは出來ません。それで國のやうな團體では、特に規則が必要です。國の規則はすなはち法令であって國民はこれによって保護され、社會はこれによって安寧秩序を保たれるのです。國民がもし法令を重んじなかったら國は秩序がみだれてその存立を全うするこどが出來ません。
我が大日本帝國憲法は、天皇がこれに依って我が國をお治めになる大法で、したがつて法令の本になる最も大切な規則です。明治天皇は皇祖皇宗の御遺訓に基づかれて、國の繁榮と國民の幸福とをお望みになる大御心から、君臣共に永遠にしたがふべきこの大法を御制定になり、明治二十二年の紀元節の日に御發布になりました。
憲法には、萬世一系の天皇が我が國をお治めになることを示して、昔から變らない國體の本を明らかにしてあります。また國民に國の政治に参與する櫂利を與へ、法律によって國民の身體・財産等を保護し國民に兵役・納税の義務を負はせるこどがきめてあります。さうして天皇が我が國をお治めになるのに、一般の政務については國務大臣をお置きになつて輔弼をおさせになり、法律や豫算は帝國議會の協賛を經ておきめになり、裁叛は裁叛所におさせになるこどになつてゐます。
憲法と一しよに制定された皇室典範は、皇位繼承・践祚卽位等皇室に關する大切な事柄をきめてある規則で、意法ど同じく國の大法であります。

【現代語訳】
第七課 憲法
人が団体をなして生活するには、誰も守らなければならない規則が必要です。もしかような規則がなく、めいめい勝手気ままなことをしたら、とても一緒に生活することは出来ません。それで国のような団体では、特に規則が必要です。国の規則はすなわち法令であって、国民はこれによって保護され、社会はこれによって安寧秩序を保たれるのです。国民がもし法令を重んじなかったら、国は秩序が乱れてその存立を全うすることが出来ません。
我が大日本帝国憲法は、天皇がこれに依って我が国をお治めになる大法で、したがって法令の本になる最も大切な規則です。明治天皇は皇祖皇宗の御遺訓に基づかれて、国の繁栄と国民の幸福とをお望みになる大御心から、君臣共に永遠に従うべきこの大法を御制定になり、明治二十二年の紀元節の日に御発布になりました。
憲法には、万世一系の天皇が我が国をお治めになることを示して、昔から変わらない国体の本を明らかにしてあります。また国民に国の政治に参与する権利を与え、法律によって、国民の身体・財産等を保護し国民に兵役・納税の義務を負わせることが決めてあります。そうして天皇が我が国をお治めになるのに、一般の政務については国務大臣をお置きになって輔弼をおさせになり、法律や予算は帝国議会の協賛を経てお決めになり、裁判は裁判所におさせになることになっています。憲法と一緒に制定された皇室典範は、皇位継承・践詐即位等皇室に関する大切な事柄を決めてある規則で、憲法と同じく国の大法であります。

※輔弼…天皇の大権行使に対して助言し、責任を負うこと
※践詐…天子の位を受け継ぐこと
※即位…位についたことを内外に明らかにすること
(六年生)
『国民の修身』監修 渡辺昇一