自分に向いた職業に就くことができるかどうかは、人生を左右する大きな要因の一つとなる。また、少しでも早い時期に進路を決定することは、人生を有利に展開するために重要なこととなる。そのため四柱推命で職業の適性を見ることは、事象の見方の中で大きな比重を占めることになる。
四柱推命によって、具体的な職業名までは断定できないが、適性がある職業の傾向性を知ることができる。その見方は大きく二つに分けて考えることになる。
―つが、営業職、対人・接客業、スポーツ関係のように、人と接する機会が多かったり、変化が多いものとなり、もう一つは、技術職、専門職、事務職のようなものである。このいずれに適性があるかを判断する基準は、すでに説明が終わっている気質と性格が深く関わることになる。
営業職、対人・接客業、スポーツ関係への適性は、食傷、財が日干に隣接しているかどうかで見ることになり、技術職、専門職、事務職は、印と官殺が日干に隣接しているかどうかで見ることになる。
しかし、営業職、対人・接客業、スポーツ関係の職業であっても、その職業に関する専門知識が求められることがある。また技術職、専門職、事務職であっても、営業的なセンスが求められることがある。 つまり、四柱八字に食傷と財があるかどうか、印と官殺があるかどうかではなく、どのような職業であっても、食傷、財、官殺、印のすべての要素が求められることになるのである。
しかし、四柱八字において、日干に隣接する干は多くて3干であるため、食傷、財、官殺、印のすべての要素が揃うことは不可能である。必ず不足する面が発生することになる。この不足する部分を補うことができるのは、生まれたあとに巡ってくる大運しかないのである。
例えば、日干に食傷や財が隣接していて、行動的で明るく、営業職や対人・接客業に向くような性格であるとするなら、就学期に、あるいは遅くとも30歳以前の大運に印か官殺が巡れば、食傷と財の良好な面に、印と官殺の要素が補われ、専門的な知識を身につける機会に恵まれることになり、職業に対する適性の幅が広がることになるのである。
しかし、日干に食傷や財が隣接しているような四柱八字で印と官殺が年齢的に適切な時期に巡らないなら、職業に関する意識とか知識が浅薄であるため、職業の選択に苦労することになってしまうのである。
逆に、日干に印や官殺が隣接しているような四柱八字で、年齢的に適切な時期に食傷や財が巡らないなら、せっかくの知識とか技術を職業に役に立てることができないことになってしまうのである。
したがって、職業の適性を考える場合、四柱八字における通変の作用の中で何が不足しているのかを明らかにして、その不足する部分を補うことを考えなければならないことになる。
また、サラリーマン、OLといった形で組織の中に身を置いて職業に従事するほうが向いている人と、それよりも独立・自営、 あるいは自由業という職業のほうが向いている人がいる。しかし、独立したり、起業したりするには一種の才能のようなものが求められることになる。
その才能の根源は、日干が強であることと言える。たとえ四柱八字で日干が弱であっても、印とか比劫の大運に巡り、日干が強められても同様である。
しかし、独立したなら、その後少なくとも10年とか20年、良好な大運に巡らなければ、望むような結果を得ることは難しいことになる。したがって、独立した後に巡る大運が味方しない場合は、独立・自営するために必要ななんらかの要素がその人に欠けていたり、もともと向いていなかったりしているもので、その問題を排除しない限り、独立自営はあきらめたほうが無難であることになる。
また職業によっては、その人の生まれながらの能力に依存するものがある。五行の事象からして、言語や文章に関する才能は火に依存し、音楽的才能は水に依存し、色彩感覚とか動体視力は金に依存し、嗅覚は士に依存することになる。
しかし、この身体的な能力において、人並み以上のものを備えている人の場合、その関する五行が特に弱かったり、強かったりすることを、実際の命で見ることができる。この点については、「五言獨歩」という歌訣に、少々極端な表現ではあるが、次のように言われている。

有病方為貴。無病不是。

〈病があるのはまさに貴とし、病がないのはこれは奇(優れていること)ではない。〉この「病」とは、命中の多過ぎたり不足する五行のことで、右の歌訣に言われていることを広義に解釈し意訳すると、「偏っている五行があることは、その人の個性となり、それはその人の才能・能力の源と考えられる」と理解することもできるのである。じつに逆説的に思われる論議であるが、実証的に妥当なことがあるのである。
例えば、才能のある音楽家の場合、水が強かったり、逆に極端に弱かったりして、水の部位である耳の感覚・器官に異常をきたすことがあるのである。ベートーベンが聴覚を失ったことは有名な話であるが、
才能は病気と紙一重の関係にあるとも言え、五感が人並み以上に優れているということは、四柱推命の視点からするなら、病気の一種とも考えられるのである。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より
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