古来より、四柱八字中の位置に具体的事象に関連する意味があると言われている。この事象と関連づけられた四柱八字中の位置を定位という。
その説によると、年の干支は上祖の定位であるとされている。上祖とは、父母以前の祖先のことで、その人の血筋のおおもとという意味である。月の干支は父母の定位であるとされ、日干はその人自身であって、日支は日干と最も密接な位置関係にあることから、配偶者の定位とされ、時の干支は、子女の定位とされている。
この定位の配列の根拠は、根苗花実(こんびょうかじつ)という考えがもとになっている。つまり、年月日時の干支の順がその人の人生の流れに対応しているという考えをもとに定められているのである。年干支はその人の人生の「根」ともなる時期をつかさどり、月干支は成人する以前の「苗」のような、ちょっと弱々しい時期をつかさどり、日干支は最も華やかで活動が盛んな時であるから「花」とされ、時干支は、次の世代へとつながる晩年の「実」の時期をつかさどるとされていたのである。
しかし、この定位という考え方には、年月日時に何らかの意味づけをしなくてはならないという形式的なこだわりがあり、実証的にも無理が生じている。そもそも年月日時の干支が、順にその人の人生の時間的流れに合わせて作用を現わすと考えることは、大運と流年の作用との間に決定的な矛盾を生じることになってしまうのである。
結論から言えば、定位として実証的に有意であるのは、年月と日の蔵干のみである。つまり、年月の天干と蔵干は、日干との関わりにおいて定位としての意味を持ち、日の蔵干は月の蔵干と時の蔵干の影響を受けつつ、定位としての意味を持つと言える。そして、運歳の示す時間経過と矛盾を発生しないために、定位の意味することには、時間的に変遷する要素がないと考えなければならないことになる。
年の天干と蔵干は、間に月干、月の蔵千があり隔てられているため、日干に直接生剋・鞘の作用はおよぼさないが、月干、月の蔵干を通して、間接的に日干に影響をおよぼすことになる。実証的な見地から言うなら、年干、年の蔵干の定位として意味するところは、月の天干、蔵干と関わりつつ、その人の両親から受け継いだ遺伝的な特性を示す場所と言うことができる。したがって、古来より年干支が上祖と言われてきたことは、まったく誤りとは言えない面はあるのである。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より
0