四柱推命は、生年月日時によって命運を論じる方法であるが、占星術のように、惑星、その他星辰(せいしん・天体とか星座のこと)の配列に、人の命運との関わりを見出そうとする方法ではないし、また一個人の超人的な能力に依存するものでもない。「陰陽五行論」をその根本理論とし、天地自然の摂理と人との関わりから人の命運を論じる方法であり、その体系は論理的に構成されている。
陰陽五行論については後の章で詳しく述べることになるが、古書に言われていることを総括して、一言で言うなら、「『天』『地』という言葉で総括される自然界と、『人』という言葉で総括される人間界の関わり・相互作用を記述する原理として考え出された自然哲学」となる。中国の政治学、医学、科学、等々、ほとんどすべての分野の学問にその思想的影響をおよぼしているため、中国の文化・思想を理解するうえで必須の知識となっている。
この陰陽五行論に関する最古の記述は、戦国末期頃(紀元前2世紀)成立したとされている『書経』(『尚書』ともいう)の「洪範篇(天下統一の大法を記したもの)」に見られるが、既述のように、物証は殷の遺跡から発掘された甲骨文字が最古となる。
また、陰陽論と五行論は起源が異なるものであったが、紀元前250年頃、戦国時代に陰陽家から出た鄒愆(すうえん)が陰陽五行論として体系化したと言い伝えられている。残念ながら鄒愆の著作は現在に伝わっておらず、その思想は、『呂氏春秋』『史記』『漢書』等にわずかに残された逸文より推察するしかない。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より
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