乾(けん)は天、それは顕在意識である。

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乾( けん)は坤( こん)とならんで易の根本思想たる陰陽を体現したも のです。  いわば卦の基本の中の基本といってもいいものです。陽爻三つから成り立つこの卦は天であり、太陽であり、広大なるものであり、男性です。

顕在意識とは意識できる意識であり、言葉を言いかえれば理性ですから、これは誰でも理解することはできます。そして、人間は理性によって他のあまたある動物とは違う生き方ができるようになったのだから、これは極めて人間的であり、また強く正しい人間の理想を表しています。

また、男性の原理であるということは、女性(母)とは違った意味で創造的である。女性が子供を生む最初の力、エネルギーは男性にあるという意味で、それははじまりであり、宗教の世界における神に匹敵する始源的な存在でもあります。

一方で天をあらわすということは、地の女性的原理とはちがった抽象性、無限性、夢みたいなものがあるのも事実で、この点では強く大きく男性的だが、足が地につかないロマン性も兼ね備えている。顕在意識、つまり理性による判断が、しばしば誤るのもこのへんに原因を求めることができます。

いずれにしても乾(けん)は広大、強大にして天に属し、太陽であり、純正な正義、理想を体現するものである。健康で一点の曇りもない。人間のレベルで考えて、「これぞ理想の人間像である」と万人が認めるような人間の持つ属性を思い浮かべれば、この卦持つ意味が理解できるでしょう。(もっとも、そういった人間が現実に存在するかどうかといえば、これはきわめて稀です。

そこに人間社会の理想と現実のギャップがあり、それだからこそ易占いと指針の体系を必要としているのだともいえます。)

以下、判断の材料として乾の持つ各ジャンルのキーワードを記しておきます。これはいわばイメージで、ここに記されたものから派生する類似の存在にも解釈を広げてかまいません。易占いは、各自が自分の境遇や当面する問題、経験、知識、情報など によって「自分にとっての指針」を得ればいいのであって、そこに他人と共通する客観性を求める必要はないのです。なぜなら、人の顔が一人として同じでないように、人の運命も一人とし同じことはないからです。

 

*乾(けん)の持つ象徴語

〔概念〕天、創造的、強大、円満、広大、剛健、無限、神、正、支配、宇宙、自然の法則、絶対、男性、理性、顕在意識、高い、速い、真善美、

〔人間〕皇帝、聖人、君子、祖父、父、夫、支配者、大統領、首相、社長、ボス、エリート、VIP、紳士、専門家、リーダー、名人、大悪人、独善的人間

〔自然〕大河、川、海、大平原

〔動物〕竜、馬、小牛、ライオン、虎

〔身体〕頭(大脳)、肺、心臓、ペニス、骨、筋肉

 

「マーフィの易占い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)