八つの象徴語で全世界を表現したのが八卦

易には八卦というのがあります。八つの象徴語から成りたっており、これが組み合わさって六十四卦ができ、この六十四卦にそれぞれ六つの爻(こう)がついて三百八十四爻となる。さらに変卦が加わる膨大な体系ですが、本書ではマーフィー博士の「できるかぎり簡素化して、誰にもわかるようにエキスだけを抽出」するという基本方針にそって、まず八卦の説明をしていきたいと思います。

この八卦は、次の六十四卦を構成する基礎となるもので、易の基本中の基本といっていいものです。八卦が理解できて、はじめて六十四の卦の意味が読み取れる。その意味でこれだけはきちんと頭の中に入れておく必要があります。

もっとも、これはそう難しいものではありません。八の卦はそれぞれ象徴として多方面にわたって、独自の意味を持っており、それを記憶しておけばよいのです。わたしたちにとってなじみにくいのは、むしろその非日常的な用語です。たとえば炊(かん)というのは水をあらわし、底の知れない危険をあらわしている。

これはなぜ、といわれれば説明できることですが、それと同時にそういう意味なのだということをまず頭から覚えこむことも大切です。こうして一つひとつの卦についての傾向をつかむと、六十四卦や各爻の解釈に幅が出てくる。この幅こそが易の妙味であり、また各自の独特な理解、解釈の基礎となるのです。

易の基本をなす八卦とは乾、坤、震、坎、艮、巽、離、兌のことである。これはそれぞれの図に示したように、記号としての意味を持ち、その記号が含む内容があるわけです。

たった八つの記号化されたシンボルがどれだけ広大な世界を形成しているかは、ほとんど想像外のものといえます。

その昔、ギリシャの哲人は「地、水、火、風」の四元素から万物はでき上がっているという哲学を打ち立てましたが、易の世界もそれにまさるとも劣らない。易ではさきの(けん)、坤(こん)、震(しん)、炊(かん)、 艮(ごん)、巽(そん)、離(り)、兌(だ)を天、地、雷、水、山、風、火、沢とし、これを基本に森羅万象を説明しようというのす。では、次にそれぞれの卦の持つ意味を見ていくことにしましょう。

 

「マーフィの易占い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)