◇易はあなたの潜在意識に活力を与える

ある主婦は、夫が腹部の痛みを訴えるのをたいへん心配していました。彼女は医者に行くことをすすめましたが、 夫はガンとして受けつけません。痛いといっては鎮痛剤を飲み続けていました。ある晩、この主婦は夫が病院にかつぎ込まれる夢を見ました。

夢の中で医者は彼女に向かって「あなたのご主人は腹膜炎をおこしています」と告げました。すっかり心配になった彼はマーフィー博士をたずね、易で占ってくれるように頼みました。「夫はいますぐに医者にかかるべきでしょうか」易占いの結果、6番目の卦「天水訟(てんすいしょう)」が出ました。そこには「重要人物に会うように」と書かれていました。(『易経』には「大人をみるによろし」という言葉がひんぱんに出てくる。これは、すぐれた人物、専門家、長老などによく相談せよという意味である。)

彼女はこれを「すぐに医者にかかるべぎだ」と判断し、夫を説得して医者に行かせたころ、はたして腹膜炎をおこす寸前の状態だったのです。

これは偶然でしょうか。そうではありません。彼女の潜在意識は、確実に未来の予測していたのです。

しかし、それを彼女の理性が素直に受けとめることができず、そのために夫にまではわらなかった。それが易という行為によって、潜在意識が刺激され、より強い信号を彼女の目ざめた意識に送り込んだのです。

もし易占いをしなかったとしたら、彼女の夫は手遅れになってから、危険な事態に気づくはめになっていたかも知れません。易のメッセージが潜在意識からの回答であるとうのは、こういう意味なのです。

わたしたちも、たとえば何だかわからないが、気になって落ち着かないというときがあります。

「何かをしなければいけなかった。だがその何かが思い出せない」そんなとき周囲の人間が何気なくいった一言で、パッと思い出すという経験があります。

これは潜在意識にある種のキーワードが与えられたからです。キーワードは直接的なのでなくてもよい。たとえば、山田さんとMという喫茶店できょう午後三時に会うという約束を一週間前にしたが、まったく忘れていた。いや何かあるとは思っているのだが、それが具体的に思い出せない。そんなとぎ誰かが「ケーキを食べたいわ」といったとするその一言で約束を思い出すことができた。

なぜ思い出せたかというと、約束のMという喫茶店はケーキがおいしいことで有名であった。山田さんと電話で約束したとき、「あの喫茶店でケーキが食べられるな」とそのときチラッと思っていた。その想念と、誰かがいった「ケー 」の一言から、重要な約束思い出せたわけです。

この場合、潜在意識は忘れていたわけではない。それどころか、さかんに「約束があますよ」と信号を送っている。だがそれを理性が感知できない。こういう例はかなりあるはずです。こんなとき、適当な言葉、あるいは行動などの刺激を与えられると、それがキワードの働きをして、潜在意識はよりはっきりした信号を送ることが可能になるのです。

易はキーワードの宝庫です。そこには実に見事に体系化された人間の営為のモデルケースがつまっている。しかも、それは考え抜かれた抽象的表現として、わたしたちの目の前にあります。それを読むことによって、わたしたちは人生における些細な選択から重大な決断までをすることができる。その決断は、何も易の本に書かれているからではない。あなた自身の潜在意識が惑知し、あなたの目ざめた意識に訴えかけようとしているものをより鮮明にしてくれるのです。

 

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)