◇易の否定的回答にはどう対処するか

「禍福はあざなえる縄のごとし」

禍も福もより合わせた縄のようにやってくる。『史記』にはこういう言葉があります。

どんな幸福も永遠に続くものではないし、どんな不幸もいずれは去っていく。幸福も不幸もコインの裏表のようなものである。もっといえば、幸福と感じるのも、不幸だと思うのも、その人の心の状態如何(いかん)であるということです。

人から羨(うらや)ましがられる境遇にあっても、当人はすこしも幸福感を抱いていないこともある。逆に客観的にみて不幸と思われる情況にある人が、人が考えるほど不幸だと思っていない・・・要は本人の心構え―つだといってよいでしょう。

「人間万事塞翁(さいおう)が馬」ということわざは、良いことがあっても有頂天にならず、悪いことがおきても絶望しないことが肝心であるということを教えています。

易で―つの大きな問題は、否定的なメッセージが出たとき、それにど う対処するかということです。健康診断のためだけに医者に行くのをためらう人の中には「何をいわれるかこわいからいやだ」という人が少なくありません。易占いも同じでいい卦(か)が出ればいいけれど、不吉な卦が出ると心配になるから」という。易占いの否定者には、案外このタイプが多いものです。

だが心配は無用です。『易経』の根本思想は「変化」ということにあり、いい卦も悪い卦もそれは絶対的、不変の回答ではないのです。易の卦(回答)が抽象的なのは、そのためだといってもいいでしょう。易がもたらす回答をどう受けとめるかは、あなたの心の状態によってちがってくるのです。

たとえばある計画について質問したときに「災難」という回答が得られたとする。その場合、あなたは不安にかられたとしましょう。だが、その不安はあなたの潜在意識が抱いていた不安なのです。だから、その不安を消すことができれば災難も回避できる。それは計画の断念であるかも知れないし、変更、延期であるかも知れない。逆に「成功」の回答が得られたとすれば、あなたは自信を持ってそれに取り組めぼいい。

悪い回答を恐れることは、結果的に恐れた結果を手に入れることになります。なぜなら、易がもたらすマイナスのメッセージは、あなたの計画に問題のあることを告げているからで、それはむしろ広い意味でのあなた自身の成功の指針となっているわけです。

「良いことを思えば良いことがおきる。悪いことを思えば悪いことがおきる」という潜在意識の原則を忘れない限り、易によって得られた回答は、あなたにとって仇をなすことは絶対にないといっていいでしょう。

 

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)