報道の裏を読む — 展望力をつけるために 抗議文が届いたということ 虎ノ門ニュース 武田邦彦・須田慎一郎

報道の裏を読む — 展望力をつけるために
抗議文が届いたということ
虎ノ門ニュース 武田邦彦・須田慎一郎 — 令和8年10月9日放送
十月九日金曜朝の「虎ノ門ニュース」は、武田邦彦先生と須田慎一郎さんの回でした。冒頭に取り上げられたのは、日本経済新聞が須田さんに抗議文を送ったという、当のご本人が出演している日の話題です。そこから消費減税の財源、簗農水大臣の発言、ノーベル賞、愛知・名古屋アジア大会、中国外務省の高市総理呼び捨てへと話が進み、最後にまた大手紙の話へ戻って本編が締めくくられました。
ここでは本編の要点を、話された順に記録します。メンバー限定の「虎ノ門サイエンス」(AIは人類を滅ぼすか)は含めていません。
一 日本経済新聞が須田さんに抗議文
日本経済新聞社は8日、須田さんのYouTube番組で事実に反する動画が配信されたとして、抗議文を送ったと報じました。須田さんは8月の動画で、日経の編集局長が社内で「倒閣宣言」をしたと伝えていました。日経側は、そうした発言は一切ないとして動画の取り下げを求めています。
須田さんはまず、これを言論弾圧だと騒ぐつもりはまったくない、と前置きしました。ただ、配信は8月で、そのあいだ電話一本の苦情もなく、いきなり記事で知った、抗議文そのものもまだ手元に届いていない、とのことです。取材は日経の社内外の複数の関係者からとったもので、動画では編集局長がなぜそう動くのかという背景も説明している、と述べました。そのうえで、高市政権発足後の日経の論調や記事が「倒閣宣言」と一致しているかどうかは、読者と視聴者が判断すればよい、という立場です。
武田先生は、自分も朝日新聞やNHKからたびたび抗議を受けてきたと話しました。報道機関は自前の発信手段を持っているのだから、反論は紙面でやればよい。ところが本筋では反論せず、別の角度から攻めてくる、と。学会では異論は必ず学会の場でぶつけ合うのが不文律で、議論を裁判に持ち込むのは筋違いだ、とも語りました。
須田さんは、大手メディア同士が批判し合わないのは「お互い脛に傷を持つ」なれ合いがあるからだと指摘しました。これまでYouTubeは相手にされず無視されてきたが、抗議文が来たということは、もう無視できない存在になったということだろう、と。武田先生も、ついにYouTubeが地上波を超えた証しだと評しました。須田さんは最後に、文書のやりとりではなく、日経の編集局長にこの番組へ出てもらって直接話し合えばよい、と呼びかけました。
話の途中で武田先生から一つ問いが出ました。経団連も日経も消費税減税に抵抗しているが、買ってくれるのは庶民なのに、なぜ客が喜ぶことに反対するのか。須田さんの答えは、消費税は所得の低い人ほど負担が重い逆進的な税で、減税の恩恵も低所得層ほど大きい。しかし大企業は主に中堅以上や富裕層を相手に商売してきたので、減税に関心が薄く、むしろ法人税の負担が増えることを嫌っている、というものでした。
二 臨時国会 消費減税の財源と簗農水相の発言
8日の参議院本会議で、高市総理の所信表明演説に対する代表質問が行われました。食料品の消費税減税の財源を問われた総理は、社会保障の財源に穴を開けることはないと答え、租税特別措置や補助金・基金の見直しで充てる考えを示しました。
須田さんの説明では、食料品の減税で年間およそ4兆8000億円、2年で約10兆円の税収が減ります。総理は新たな国債発行に頼らずに財源を出すと述べています。それなら具体的に示せばよいのに、なぜ今言わないのか。須田さんによれば、いまは予算編成のさなかで、与党の事前審査を経る前に財源を明かせば手続きの順序が逆になり、与党から反発を受けるからだ、とのことです。官邸や財務省を取材しても、財源についてはかなりの自信を持っている、と述べました。
武田先生は、そもそも「税金を使うには財源が要る」という議論がおかしい、と切り出しました。アメリカの高速道路は無料で、国が建設費を出すが、誰も財源を問わない。道路で国民の働く効率が上がればGDPが増え、税率が同じでも税収が増えるからだ、という説明です。教育も同じで、国立大学の学費が安いのは、卒業後に国のために働いて返してもらうための投資であり、小中学校の義務教育が無償なのも、その分だけ国民の力が増して国が豊かになるからだ、と語りました。
須田さんは、それこそが「責任ある積極財政」の考え方だと応じました。これまでできなかったのは、その年度の中で収支を合わせようとする単年度主義のせいで、高市政権は複数年度で考える方向へ改めようとしている。所信表明で使った「積極財政元年」という言葉はその意味だ、と。自民党の宮沢洋一税制調査会長が財源は「食べ尽くした」と述べた件には、単年度で見ればそうなるだけだ、と二人とも批判的でした。財務省の上層部にはまだ古い考えが根強く、戦後ずっと続けてきたやり方を180度変えるのは難しい、とも須田さんは付け加えました。
もう一つの論点が、簗和生農林水産大臣の発言です。衆院選で自分を支援しなかった地元首長の自治体の道路予算を削った、という趣旨の発言を立憲民主党が追及し、総理は発言は不適切だとしながらも続投させる考えを示しました。
須田さんは、発言そのものは問題で撤回は必要だし、国交省への電話の影響も検証すべきだとしたうえで、背景を説明しました。栃木3区はかつて渡辺美智雄氏の地盤で、その後を継いだ渡辺喜美氏がみんなの党へ移ったため、自民党が公募で迎えたのが簗氏だった。地元の一部には今もよそ者と見る空気があり、今回の選挙では渡辺系の支援者が無所属の渡辺氏を立て、自民党の地方組織が割れた。簗氏は小選挙区で敗れて比例で復活し、その後の内輪の後援会で厳しく突き上げられた場で、つい口にしたのが問題の発言だった、という経緯です。それが国会召集の直前に複数の媒体で一斉に報じられたのは偶然ではなく、相手陣営が簗氏を政治的に葬ろうとしている面がある。総理もそれを承知のうえで続投を決めたのだろう、と見ています。
武田先生は、本会議でこんな話をするより、中国が攻めてきたらどうするか、AIをどうするかといった本筋を議論してほしい、と述べました。さらに話を広げ、1990年代にソ連と東欧の共産党が消えて以降、世界から本来の左翼は姿を消し、ヨーロッパで「極右」と呼ばれている政党も実態はかつての保守政党だ、日本のメディアと政治の見方は30年ずれている、と持論を語りました。
三 ノーベル賞 ニュートリノと「不斉自己触媒反応」
今年のノーベル物理学賞は、アメリカ・ウィスコンシン大学マディソン校のフランシス・ハルゼン教授に決まりました。南極の氷の下1500メートル以上の深さに約5000個の検出器を埋めた観測施設「アイスキューブ」を率い、高エネルギーのニュートリノが実在することを初めて突き止めた人物です。化学賞は、東京理科大学名誉教授の硤合憲三さんと、パリ第11大学のアンリ・カガンさんに決まりました。
武田先生の解説は大きな見取り図から始まりました。アインシュタインに始まる物理学の大きな発見は一段落し、いまは宇宙が何でできているのか、という根本の問いに向かっている。最新の物理では真空は空っぽではなく、私たちの目に見える光の範囲が限られているだけだ、という話です。
ニュートリノは、この世界をつくる基本の粒子のうち最もわかっていないものの一つで、私たちの体を毎秒膨大な数が素通りしている。日本は神岡鉱山の跡に研究施設をつくり、小柴昌俊さんと梶田隆章さんがノーベル賞を受けた。ニュートリノはほとんど何にも当たらないため、ハルゼン教授は南極の氷を巨大な検出器にして、ごくまれに当たるものを捉えた。それを分析すると宇宙の果てで何が起きているかがわかる。地味で根気のいる研究で、それを支える人がいたことも立派だ、と武田先生は評しました。
化学賞については、右手と左手のように形は同じでも重ね合わせられない分子の話から説明しました。生き物の体はこの片方だけでできているが、人工的に片方だけを作り分けるのは難しく、野依良治さんらの仕事でようやく可能になった。ただ、それでは生き物の体の中で片方だけができていく仕組みは説明できない。硤合さんは、片方ができるとそれが自分と同じ側をどんどん生み出していく反応を見つけた、これが「不斉自己触媒反応」で、生命の成り立ちに迫るものだ、と。武田先生は、今年の受賞の中ではこれがいちばんだと思う、と語りました。
最後に武田先生は、ここ10年ほどは実用寄りの研究に賞が出る傾向があったが、今年は人間や宇宙の成り立ちに迫る大きな研究に戻ってよかった、と述べました。1990年ごろから「役に立つ研究」ばかりがもてはやされ、何の役に立つかわからない研究をする人が減ったことが日本の弱さにつながっている、とも。
四 愛知・名古屋アジア大会と大村知事の発言
アジア大会の新競技テックボールで、タイの関係者が食事のメニューが少なかったとSNSに投稿したことに対し、愛知県の大村秀章知事が6日の会見で「再生回数稼ぎに来たのかと思った」「こういう人には来てほしくなかった」と述べ、タイでも反発が広がっています。組織委員会は9月に、その食事は組織委員会が提供したものではないと発表していました。
名古屋に住む武田先生は、大会運営そのものがひどかったと話しました。宿舎が足りず選手が廊下で寝ていた、食事が出ずコンビニに買いに行っていた、試合が深夜にずれ込んだ、といった話です。武田先生によれば、運営を担ったのは中国系の企業で、費用も当初の見込みを大きく超えたとのことです。そのうえで、愛知の人たちは知事を選んだのは自分たちだという思いから、恥じ入って黙っている、と述べました。
須田さんは、大阪・関西万博で海外パビリオンの工事代金の未払い問題を起こした中国系のコンサルタント会社が、今回のアジア大会でも業務を請け負っていると指摘しました。安さだけで外国企業に任せたうえ、運営がきちんと回っているかを確かめる仕組みがなかったことが大きな失敗だ、と。また、選挙で選ばれた知事が責任を負わないことは民主主義そのものを損なうし、今後、愛知での国際大会の誘致は難しくなるだろう、と述べました。
五 中国外務省の「高市」呼び捨てに日本が抗議
外務省の北村外務報道官は7日の会見で、中国外務省の副報道局長が日本の防衛力強化を批判する中で高市総理を呼び捨てにしたことについて、一国の指導者にしかるべき敬意を払うのは国際儀礼上当然だと批判し、中国側に申し入れたことを明らかにしました。
須田さんは、日本は相手と同じように呼び捨てで返すことはしない、それでよい、と述べました。淡々と、しかし強く抗議すればよく、挑発の手には乗らないことだ、と。これまでなら日本が慌ててすり寄ってきたところを、今回は高市政権が動じないので、中国側が次の手に困っているのではないか、という見立てです。
武田先生は、日本が1945年9月2日に降伏文書に署名した相手は中華民国、つまり今の台湾であり、今の中国とは戦っていない、と強調しました。NHKは中国側の主張を伝えるとき、その点を補って報じるべきだ、と。また、トランプ大統領と習近平国家主席の会談後もアメリカは台湾へのF-16の引き渡しを続けており、友好的に見えた会談の実態はそこに表れている、と述べました。
須田さんは、ある全国紙が高市総理と財務省は裏ではつながっていると一面で報じた例を挙げ、総理本人から確かめればすぐわかることを想像で書くほど、大手紙は政権中枢に食い込めていない、と指摘しました。冒頭の日経の話題とつながった形で、本編は締めくくられました。
※ この記録は番組の内容を要約したものです。文責は三原嘉明にあります。出演者の発言の趣旨と異なる点がありましたら、私の読み取りの誤りです。
AIと人の創作の関係については、UCA(新しい知財の構想)として提言をまとめています。▶ 提言を読む
この記事の正本は「おてんとうさまの下で」の記録に置いています。▶ 記録の一覧へ
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