◆ 「筋肉」を使わなくなった人間社会 ◆「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房刊より

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◆ 「筋肉」を使わなくなった人間社会 ◆

物理の進歩がきっかけになり、人間社会は爆発的に発展していきます。「力と物の時代」の到来です。
それが、現在の我々の生活の基礎となっています。家には冷暖房機があり、その他の電化製品や水洗トイレがあり、移動手段は自動車から高速列車、飛行機まである。このような生活ができるのは、急速に理解が進んだ「力」の利用の産物です。
住環境や街並みも劇的に変化しました。石器時代から中世まで(日本では「江戸時代」まで)の風景は、実はあまり変わっていません。それまでは基本的に平屋が多く、階層も2階まで。宮殿や城などもありましたが、現在のような超高層の建物はなく、アスファルトの道路や線路もなかったのです。
ところが150年の間に、とても大きな変化が起こりました。江戸の街並みと現在の東京の街並みを比べてみると一目瞭然でしょう。

人間は長い間、「体(筋肉)」と「頭脳」を使って生活してきました。
「体(筋肉)」を使って、鍬(くわ)を振るったり、獲物をとったり、家を建てたりします。
「頭脳」を使って、計算をしたり、文字を書いたり、プランを立てたりします。
この2つが、基本的な人間活動に必要なものです。
ところが産業革命から、我々が「筋肉」を使う機会が激減していきました。
例えば、稲作です。人間の力だけで鍬を振るって田を耕していた時代、農民は1年間の約11カ月を農作業に費やしていました。稲床を作り育て、雑草を取ったり、虫を捕ったり、実ったら刈り取って脱穀したりなど、かなりの手間が掛かります。
ところが現在では、苗植え機があり、肥料や除草剤があり、そして稲刈り機や脱穀機があります。これらを使用すれば、人間の力を使わずに作業することができるので手間が大幅に減りました。
農業で人間の力を使って作業する期間は、実質約一か月という調査結果も出ています。
つまり、「筋肉」を使う期間が10分の1以下になったということです。
これは農業だけでなく、工業でも同じです。昔は女下が手を使って糸を紡いでいました。
少しずつ糸を織り、織物にしてそれを裁断して、一着一着服を作っており、とても大変な作業でした。それが、18世紀に力織機、19世紀に自動織機が発明されたことにより、織物が短時間で作れるようになりました。大量生産が可能になり、それが他製品に広まっていきました。
冷暖房についても同じです。昔は山の木を切り、それを一生懸命連んできて、蒸し焼きにして炭を作り、その炭を火鉢に人れて火を起こして暖を収っていました。それが今ではスイッチ一つであっという間に部屋を暖かくすることができます。
このように産業革命によって人間社会は大変革を遂げましたが、実はこの「力と物の時代」は20世紀で終わったのです。
正確には、1990年前後と言ってもいいかもしれません。日本ではバブルが弾け、世界的にはソビエト連邦の崩壊、ベルリンの壁の崩壊、中国での天安門事件など、一つの時代の終わりを告げる出来事が頻発した時期です。

「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房 令和6年刊より
R080812

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