◆ 「力が正義」の原則下での「自由と平等」 ◆
近年、「力が正義」の思想が世界を席巻しています。しかし、これこそが多様性や持続可能な社会への障壁となっているのです。
「力が正義」の中で、「自由と平等」という概念で社会を形成するとどうなるでしょうか。一般的には「自由と平等」のある社会が理想とされていますが、「力が正義」の原則下でそのシステムをつくると人きなひずみが生まれてしまいます。
人は意識的にも無意識的にも、その社会システムの中で力が強いと認定される状態を目指すからです。
例えば「学力」。頭が良い人は、学力で社会の上層へ行こうとします。
日本の大学の序列では、いちばん上が東京大学です。小中高でも順位がつけられ、それが学力における序列になります。そして、その序列に沿って「自由と平等」が作動します。
勉強するのも自由、塾に行くのも自由、どこを受験するのも自由です。しかし、そこには必ず序列ができますから、学力のある人が上に行きます。
いちばん学力の高い東大を出た人が、高級官僚になったり、大学教授になったり、大手企業で出世する……。そして、そのままの序列で社会システムは構成されていくのです。
もちろん、力は学力だけではありません。生まれた家が非常に裕福であると、その子どもは、「金力」という力を得ることができます。幼少期から家庭教師をつけることができますし、社会人になっても親の財力で起業することもできます。
これらも「力が正義」なので、悪徳ではありません。
このことを最も象徴している国が、視在のアメリカです。アメリカは「力が正義」という考えが根底にあり、その表層に「自由と平等」という考えがある二重層の国家です。
その二重構造の中で、「自由と平等」が発揮されると格差が広がります。力のある人はどんどん上へ行き、力がない人はどんどん下に落ちていくからです。
そして上の階層に行くと、自分たちに都合の良い社会的ルールをつくり始めます。
例えば、大富豪であれば議員に働きかけて、高所得者の税金を減らすような法律をつくらせることも可能です。または、優秀な税理士を雇って大幅な減税対策をすることもできます。
つまり、「力が正義」の思想で「自由と平等」を実現しようとすると格差が広がり、多様性や持続性のない社会になることをアメリカは示しているのです。
「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房 令和6年刊より
R080731

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