株価と税金は、実は同じ一つの原理でできている
報道の裏を読む — 展望力をつけるために
株価と税金は、実は同じ一つの原理でできている
武田邦彦「ホントの話」第217回を読む / 2026年7月24日放送・友達TV

日経平均が一時2700円以上も下げた——このニュースを入り口に、武田先生はこの回で「株価とは何か」「税金とは何か」を根っこから語り直しました。専門家の解説をそのまま信じるのではなく、原理そのものを自分の頭で掴む。展望力を養うとはこういうことか、と感じる回でした。難しいグラフが一枚出てきますが、順を追えば必ず腑に落ちるはずです。
1 なぜ経済の専門家は「逆」を言うのか
先生がまず注意を促すのは、経済記事を書くのは経済の専門家だが、その多くは残念ながら学問に忠実ではない、という点です。株に詳しい人ほど、自分も株で生活していることが多い。すると、これから上がると見込んだ株ほど「下がる」と言う。安く買いたいからです。そして買い終えた頃に「この会社は有望だ」と言い出す——有名だからこそ新聞やネットに登場でき、容易に儲けられる。だから断片的に「いいと言う株は買うな」などと口にすると、自分は変人扱いされる、と先生は苦笑します。お米でも同じで、値動きを知る人が一般の人に高値で買わせ、安くなると分かっていて黙っているのは誠実ではない、と。学問を多数決で決めてはいけない——ガリレオもダーウィンも少数だった、という先生いつもの一言が、ここでも効いています。
2 株価は片対数グラフで一本の直線になる
ここで例のグラフが出てきます。横軸は明治10年(1877年)ごろから現在まで、これは普通の目盛り。縦軸の株価だけを対数目盛りにする——これを片対数グラフと呼びます。すると、西南戦争があり、大恐慌があり、先の大戦があり、バブルとその崩壊があり……それでも長い目で見れば、日経平均は驚くほど一本の直線に乗る、というのです。好景気の時はこの線より上に、戦争の時は下にぶれますが、必ず直線に戻ってくる。これはアメリカのダウ平均でも同じで、原理なのだと先生は言います。
3 株価とは「人の価値」である
なぜ直線になるのか。先生の答えはこうです——株価とは、その時代の日本人一人あたりの、社会に対する平均的な価値の尺度だから。明治の頃およそ2円だったものが今は2万円だとすれば、我々一人が生み出すお金の価値が1万倍になったということ。金(きん)を買えば金の価値、現金を持てば現金の価値、そして株が表すのは「人の価値」なのだ、と。江戸から大阪まで二十日かかった道のりが新幹線で3時間になった——その効率化の総和が、株価に現れているだけ。だから株価は架空のものではなく、平均すれば年に2%ほど、日本はもう少し急な角度で、必ず上がっていく、というのが先生の見立てです。
4 だから予測できる——4万円を超えると言った日
この原理があるから、株価はある程度予測できる、と先生は言います。民主党政権の頃、日経平均が1万円を割った時、講演会で何度も聞かれたそうです。「本当に大丈夫か」と。先生の答えは「4万円は超えます」。理由は原理原則だから。ただし、いつ超えるかは分からない——そこには社会の変動と、何より人の気持ちが入るからです。買い方はシンプルで、直線を引き、株価がその線より低く、しかも皆が「将来は駄目だ」と言っている時に買う。専門家が逆を言うことまで織り込むので二重にひねくれて見えますが、数学的にやっているだけだ、と。では今(2026年7月)はどうか。先生は、適正はおよそ4万5000円から5万円の間で、5万円を超えていれば少し警戒する、と語りました。放送時点の6万4000円台をどう読むかは、この一本の直線に照らして各自が考える——そういう「道具の使い方」の話だと感じます。
5 高速道路に学ぶ「財源はいらない」の意味
話は税金へ移ります。先生の高速道路論が明快です。アメリカやドイツの高速道路は基本的に無料。なぜか——高速道路を作れば国民の移動効率が上がり、活動力が増える。活動力が増えれば国民の富が増え、収入が増える。税率さえ一定にしておけば、道路を作っても作らなくても、その分だけ国の税収は自動的に増える。だから通行料を取る必要がない、というのです。つまり「財源がいる」という言葉は、その支出が国民を豊かにする方向ではない、という告白に近い。逆に、国民が良くなる政策なら、必ずそれ自体が財源を生む——株価が上がると言っても、国民の富が増えると言っても、同じことだ、と。(例外は橋で、効果の計算が難しいためアメリカはおよそ1ドルだけ取る、という補正の話も添えられました。)
6 地方税だけが増えていく不思議、そして年金
最後に、先生が「変な話だ」と首をかしげたのが地方税です。かつて40兆円ほどだった地方税収が、今は50兆円を超えている。一方で国民の収入は一人あたり460万円で横ばい、消費税が3%から10%になったため手取りは390万円まで落ちている。所得が落ちているのに地方税収だけが増えていく——本来は国民の所得が上がってこそ税収も上がるべきで、これは逆ではないか、と。年金についても、お年寄りが増えたから年金が大変になる、というのは正しくない、と先生は言います。老人比率が当時の想定から大きく変わったのなら別だが、そうではない。年金はもともと物価スライドで上げられるよう設計されていて、財務省も厚労省もそれは分かっているはず——だからNHKこそ、その設計に照らして「年金が増えたから税収が要る、ではない」と国民に伝えるべきではないか、と結びました。
◆ 事実の確認
番組での先生の株価・財政論は、独自の原理に基づく力強い見立てです。通説の立場から、二点だけ補っておきます。第一に、株価が長期で右肩上がりに推移する傾向は多くの国で観察されますが、片対数で「必ず一本の直線になる」わけではなく、将来の値動きを保証するものではありません。投資の判断はあくまで自己責任で。第二に、「国民が豊かになる政策なら財源はいらない」という考え方は、投資の波及効果を重んじる一つの見方であり、財政学では税と歳出の関係をより慎重・複雑に扱います。先生の主張は、筋の通った一つの視点として受け取るのが穏当だと感じます。
むすびに
株価も税金も、突き詰めれば「人一人が生み出す価値」という一つの尺度に還元される——これがこの回の芯だと感じます。ニュースの上下に一喜一憂するのではなく、長い直線を一本引いて今を眺める。報道の裏を読み、原理から判断するとはこういうことだ、という手本のような回でした。
出典:武田邦彦「ホントの話」第217回(2026年7月24日放送/友達TV)
※本記事は番組での武田邦彦先生の発言を、自動文字起こしをもとに論旨を整理して紹介したものです。各見解は武田先生のものであり、内容には世間の通説と異なる主張も含まれます。
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