◆ 3000年間で地球の気温はとう変化Lたか ◆
第一部 環境問題の不都合な真実
第一章 地球は「温暖化」と「寒冷化」を繰り返している
「多様性があり、持続可能な社会を目指す」ことが叫ばれている昨今‘”地球温暖化の問題“が最重要案件となっています。
一般的に、産業革命以降、大気中の二酸化炭素(CO2) の濃度が急上昇してきているとされ、それは経済活動によるCO 2の排出量の急増が原因と見なされています。さらに、これに伴い世界の平均気温も上昇傾向にあり、このまま上昇し続ければ2100年には最大で5.7℃上昇するという予測もあります。
このような一般論には科学的な誤解が多分に含まれているのですが、まず「地球温暖化」を論じる上での大前提として、地球が現在までにどのような温度変化をしてきたか——を基礎知識として知っておく必要があるでしょう。
例えば「北大西洋の海水面温度」を見てみると、紀元前1000年から西暦2000年の3000年間の気温は上がったり下がったりしていますが、現代(2000年初頭)の気温は、この3000年間の平均値よりやや低いということになります(次ページの図1参照)
西暦300年頃に底を打ち、そこから1000年に至るまで、地球の気温は現在と同じような状態で上昇しています。もちろん当時は、人間が石油や石炭、ていたわけではありません。CO2が増えたから、気温が上昇したわけではないのです。
「中世温暖期」※4 (10~14世紀)は現在よりも温かく、日本では「寝殿造り」という、家の外側に廊下があるような建築様式も出てきます。雪が降るようなところでは外側にある廊下は使えなくなりますし、このような風通しの良い建築様式ができたということは、当時の気温がかなり高かった証拠と言えます。
また、現在のオホーツク海は冬に流氷が来ますので海産物がとれなくなりますが、遺跡などから中世温暖期には、冬でもオホーツク海で海産物がとれたと考えられています。

中世ヨーロッパでも北洵が湿かくなり、海氷がなくなっていったので、海へ船で乗り出すことができるようになります。グリーンランドやアイスランドが発見されたり、人がそこに住むようになったりしたのはこの時期になります。
ヨーロッパのアルプスでは、寒冷化すると雪が山裾まで積り、凍るので、山小屋は標高の低いところに設置されます。反対に、温暖化すると氷が少しずつ山頂の方向に溶けていくので、山小屋は棟高の高いところに設置されるようになります。山小屋の位置をみれば、その時代の気温がわかるのです。
こういった歴史的な事実から、中世は暖かかった時期だったことがわかりますが、さらに詳しい温度の変化も科学的に算出できます。
例えば、南極の氷をボーリング(掘削)して、円筒状の氷の柱を切り出し、円筒状の上から下へ順番に酸素の同位体を調べることにより、過去にさかのぼって気温を推定するという方法もあります。
中世温暖期を過ぎると、だんだん気温が下がり「小氷河期」※5(14 世紀半ば~19世紀半ば)に入ります。
17世紀半ばでは、スイス・アルプスの氷河が徐々に低地へと広がり、谷筋に広がる農場を飲み込み、村全体を押し潰していきました。1780年の冬にはニューヨーク湾が凍結し、マンハッタンからスタテンアイランドまで歩いて渡ることができたといいます。
この頃の日本では、天明の大飢饉※6(1782~1788年)などの飢饉が続きます。寒冷化を原因とする農村での一揆の頻発は、幕藩体制を揺るがしました。
現在、多くの人が「温暖化は怖い」と思っているようですが、歴史的に言えば「寒冷化のほうが怖い」のです。寒くなると、人間は住むことさえ困難になります。そして、作物がとれず、ウイルスも増えやすいので、早死にする人が増加するのです。
19世紀半ばから地球の気候は温暖化に転じており(小氷河期はこの時点で終了)、現在まで気温は上昇を続けています。それでも、平安時代並みの気温になるにはあと100年以上はかかるでしょう。
※4 中世温暖期 およそ10~14世紀にかけて続いたヨーロッパが温暖だった時期。グリーンランドに氷床がなく、イングランドには大規模なブドウ園が存在した。
※5 小氷河期 およそ14世紀半ば~19世紀半ばにかけて続いていた寒冷な時期。氷河学的にはこの時期や現在もそうだが、氷期の中でも比較的温暖な時期が続く、間氷期にあたる。
※6 天明の大飢饉 江戸時代中期の1782年から1788年にかけて発生した飢饉で、当時の元号から天明の大飢饉と呼ばれている。以前から続く悪天候や冷害により農村部を中心に疲弊していた状況のなか、岩木山と浅間山が噴火。火山灰などの火山噴出物が成層圏で日光を遮り、農作物に壊滅的な影響を与え深刻な飢謹状態となった。飢饉とともに流行した疫病も影響し、全国で92万人あまりが亡くなったともされている。
「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房 令和6年刊より
R080624

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