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第四章・覚醒の時代 連載第百話 人生の、半ば

第四章・覚醒の時代 連載第百話 人生の、半ば

第 四 章 ・ 覚 醒 の 時 代
連載第百話
人生の、半ば

百話に、なった。

ひとりの、男の、半生を、ここまで、つづってきた。代沢の、清流。少年の、片思い。大学の、門。日産の、油の匂い。先妻との、出会いと、別れ。三時四十六分の、その時刻。布団の中の、「ぼく、さみしいんだ」。そして、退路を断った、福岡の、二年。

ここで、いったん、立ち止まる。

彼は、東京に、帰ってきた。四十を、過ぎていた。人生の、ちょうど、半ばだった。

振り返れば——彼は、一度ならず、退路を、断ってきた。先妻を、失っても、生きることを、やめなかった。課長の椅子を、捨てて、占いの師のもとへ、向かった。不正を、見て、まっすぐに、声を、上げた。そのたびに、彼は、何かを、失い、何かを、得た。

けれど、まだ、本当の道は、始まっても、いなかった。

* * *

東京に、戻った彼を、待っていたのは、平穏では、なかった。

人生の、後半は——前半に、負けず劣らず、波乱に、満ちていた。職を、変え、土地を、変え、何度も、たたき出されては、また、立ち上がる。その、ひとつひとつを、いつか、つづることに、なるだろう。

けれど、その、波乱の、すべての底に、流れていたものが、ある。

牧先生の、予測の技術。荒唐無稽と、笑われた、あの「うらない」の世界。それを、学びたい、という、密かな、火。福岡へ、彼を、向かわせたのも、その火だった。東京に、帰っても、その火は、消えなかった。むしろ、人生の、波に、もまれるほど、その火は、彼の中で、確かな、ものに、なっていった。

師は、言った。「馬鹿なことを、言うな」と。

けれど、その馬鹿は——馬鹿のまま、止まらなかった。やがて、その技術の、本当の深さを、知ることに、なる。円相場の、予測。人の生涯の、波。国の、栄枯盛衰。そして、その奥に、隠された、もっと、大きな、歴史の、闇。

その道のりは、まだ、これからだ。

* * *

四十年後の今、人生の、ほとんどを、歩き終えて、振り返って、思う。

あのとき、東京に、帰ってきた、四十過ぎの彼に、もし、声を、かけられるなら、何と、言うだろう。

たぶん、何も、言わない。ただ、肩を、ひとつ、叩いて、こう、思うだけだ。よく、ここまで、来た。そして、これからの、道のりは、お前が、思っているより、ずっと、長く、ずっと、深い。けれど、心配は、いらない。お前は、生かされる。何かに、助けられて、生き延びる。そして、いつか——その理由を、知ることになる。

人生の、半ば。男は、東京の、街に、立っていた。まだ、何も、知らずに。けれど、心の奥の、火だけは、確かに、灯したまま。

生かされて、今を、存在する。

百話の、その先に、待っていた、長く、深い道のりの、すべての出発点に、立っていた、人生の半ばの、あの自分を、四十年後の今、自分は、確かに、覚えている。

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