●ペットボトルを原料に戻すためにも石油を使う

ところで、ビール瓶が繰り返し使えるのにペットボトルが使えないのはなぜかというと、ビール瓶はガラスでできているが、ペットボトルはプラスチックでできているという簡単な理由による。誰でも知っているようにガラスは硬く、プラスチックは柔らかい。ガラスは傷が付かないが、プラスチックはすぐ傷が付く。もしプラスチックが硬くて傷が付かなければ自動車メーカーは車の窓をプラスチックにするだろう。
だからペットボトルもすぐ傷が付いて汚くなる。見かけが汚くなるだけではなく、傷というのは小さな溝だから、そこに異物が詰まってしまえば取れない。つまり、衛生的ではないのである。
さらにプラスチックは化学的に反応しやすい。砂糖の入った飲料をペットボトルに入れるとペットボトルの材料と砂糖が反応して新しい化合物ができる。これも厄介だし、ペットボトルにはいろいろなものが入るので何が反応して何ができるかもわからない。だから衛生的に危険である。
もう一つ、ガラスは熱に強いがプラスチックは弱い。ガラスは油にも水にも溶けないが、ペットボトルは油に溶ける。だから厄介なことには、消毒するには薬品を使うのではなく熱湯で消毒した方が良いのだが、ペットボトルに熱湯を入れると形が変わってしまう。
そこで、結局、ペットボトルを回収してもそのままでは使えないので、最初の原料に戻して全部やり直すことになり、それをペットボトルのメーカーが試みた。
その工場を山口県に建設したが、うまくいかずに今は動いていない。全国で使ったペットボトルを山口県に運ぼうとしても軽くてかさばるので運ぶのに膨大な石油を使う。さらに原料に戻すためにも石油を使い、それでも集めたペットボトルの一部しか元には戻らない。
2006年3月に「よのペットボトルリサイクル」(三重県)という会社が民事再生法の適用を申請した。つまり潰れたのである。
その会社の社長はコメントで「結局、リサイクルには手間がかかります。その上、リサイクル品はあくまでリサイクル品であり、資源ごみのペットボトルから元の透明のペットボトルが作れるわけではありません。(『日経ビジネス』2006年9月25日号)」とおっしゃっているが、この社長は被害者である。分離工学や材料工学によってそれはリサイクルを始めた時点からすでにわかっていたことだ。専門家が損得を考えずに正しい情報を社会に流すべきだったのだ。
つまりペットボトルは繰り返し使えないのだ。ペットボトルは人間がつくったものだけれど、元を辿れば自然のもの(石油)である。自然のものに「こうしろ」と言ってもその通りにはならない。自然には自然の摂理がある。

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦 洋泉社刊 2007年
202307110