水害をひどくする要因

台風(熱帯低気圧)もそれ以外の低気圧も、ふつう豪雨を降らせます。子ども時代の山陰でも、大水にどっぷり漬かった田んぼはおなじみの光景でした。豪雨が川をあふれさせ、土砂崩れや土石流が樹木や住宅を押し流す。そういうことが起こるたび、テレビではやはり専門家が「温暖化のせい」とつぶやいたりします。そうなのでしょうか?
過去数十年の日本では、都市部への人口集中が進みました。平地に余裕がなくなれば山を切り拓き、宅地を造成する開発が進みます。樹木を伐ると土地の保水力が落ち、豪雨でなくても土砂崩れが起きやすい。山の手入れをする人が激減したのも一因でしょう。典型例のひとつが
二〇一八年の七月、台風七号の折り広島県南部に五○○○か所以上の土砂崩れを生み、死者一○八名と住宅一○二九棟の全壊をもたらした豪雨です。
二〇一五年九月の関東・東北豪雨では、鬼怒川の堤防が決壊し、おびただしい住宅が水没しました。また二〇一九年一○月の台風一九号に伴う豪雨は千曲川や阿武隈川の堤防を決壊ないし越流させ、広い住宅地のほか長野新幹線車両センターの車両も水没させています。千曲川の越流箇所は、太陽光発電のため更地にした場所だったようです。
つい最近の悲惨な事故、死者二六名(行方不明一名)を数えた二○二一年七月の「熱海市伊豆山土石流災害」は、まだ係争中ながら、組織が密でない「盛り土」が流出したせい、つまりは人災だったといわれます。
豪雨の際、橋そのものや、川をまたぐ水管橋が落ちたり、道路の端が崩れたりするのはおなじみですね。そうした社会インフラの老朽化が進んでいることに、二〇二二年二月六日の日経新聞と二月二一日の『エコノミスト』誌が警鐘を鳴らしていました。だから豪雨の被害には、人災も多いのでしょう。
やや趣は異なりますが 、二〇二二年五月一七日に愛知県・矢作川(明治用水)の取水施設で大規模な漏水が起き、工場や農地への給水がしばらく止まって、田植え期の農家を困らせました。それも原因はインフラの老朽化だったようです。

「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)