世界の「気温変化」とは?
地球上には、最高気温が六〇℃を超す場所も、最低気温が氷点下九〇℃に迫る場所もあります。だから地球の全体で「気温そのものの変化」は数値化しようもありません。そこで、ややこしい言いかたになりますが、「年平均気温(や月平均気温)が、ある基準期間の平均値からいくら変わったか(これから変わりそうか)」に注目します。
プラスマイナスの向きも考えた変化の幅を気温の偏差と呼ぶため、うるさくいえば、世界全体でみた平均気温偏差の変化ですね。とはいえ、いちいちそう書くのは面倒だから、厳密でないのは承知しつつ、以下では世界の気温変化と書きましょう。
ふつう気温偏差の「基準期間」は三〇年間、たとえば一九八一~二〇一〇年とします。日ごろの天気を気象(ウェザー)、三〇年に及ぶ気象のありさまを気候(クライメート)と呼ぶため、気温のゼロ点にも、どこか三〇年間の平均値を使うわけです。
さてここからが本題。大気にCO2を増やす要因さえ、まだ完全にはわかっていない、と前章に書きました。じつは世界の気温変化も、輪をかけてあやふやなのです。解説書や教科書に載っている図も、決定版ではありません。そのことは、本章と、関連するウソ群の中で、おいおいご説明していきましょう。
本章では、時間枠を過去およそ三〇年に限り、どれくらい気温が上がったのかを大づかみに眺めます。その三〇年は、先ほどの「基準期間」とはちがい、地球温暖化の話が世に広まってから経過した時間のこと。いま三六歳でバリバリ仕事をしている人にとっては、六歳から現在までの日々ですね。
その人は六歳で小学校に上がったあと、教科書を読み、小中高校の先生に話を聞き、新聞やテレビの報道に接しながら、「何かとんでもないことが起きている」と感じ続けてきたでしょう。化学や理科教育の講演・講義で温暖化を取り上げるたび、高校生も大学生も大学院生も、ほぼ例外なくそんな感想をもらします。

地球観測室(掲載データ根拠)

三〇年より長い期間の気温変化は、ウソ7のテーマにしました。たとえば一九六〇~七〇年代は、大気のCO2濃度は増え続けたのに(図1)、日本でも世界でも「地球寒冷化」「氷河期接近」を大騒ぎしていたとか、それに先立つ一九二〇~四〇年代は「第一次(?)の温暖化」を警告する記事が新聞に載ったとか知って、驚く人もいるでしょう。
また、たとえば「東京の一月」に限れば、過去三〇年間の気温は「横ばいか下がりぎみ」だった‥‥と、いうような(そう実感している人が関東圏には多い)、ローカル気温のことは 、本章に続くウソ2のテーマです。

『「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)