私たちは、「物理」という学問を作って、この世の中の動きを捉えようとしてきました。しかしこと学校の勉強になると、細かな数式や、たくさんの公式が出てくるものですから、苦手だ、なんていう人が多かったかもしれません。
物理の世界で、偉大な人物をひとり挙げろと言われれば、それはもう、ニュートンをおいてほかにいないでしょう。リンゴが落ちて「万有引力の法則」を発見したという、あのニュートンです。
ニュートンの登場によって、物理は初めて体系化されました。
学者としては素晴らしかったニュートンですが、性格はかなり変わった人だったようです。
数学の微分という概念をめぐっては、ライプニッツという学者と論争になり、ひどい口調でしつこく罵ったりしました。世俗的な欲求も強く、中でも名誉欲には人一倍意地汚く、「俺は偉いんだ!」と吹聴せずにはいられないようなところがありました。誰もが知っている偉人といえども、私たちと変わらない、俗な人間だったと伝えられています。
さて、このニュートン、「運動方程式」として3つの法則を発見しました。
ひとつが、「慣性の法則(ニュートンの運動の第1法則)」。物体は外部から作用を受けなければ、速度はずっと一定である。動いているものは動き続ける。と、こう言ったわけです。
その他に第2法則を「運動の法則」、第3法則を「作用・反作用」の法則と呼びます。
慣性の法則は、実に面白いものです。普通の感覚でいうと、ものが動くには継続的な力が必要なように思います。しかしそうではないのです。いったん、力が加わって動いてしまえば、動き続けるのです。むしろ、止めるときに力が必要になってくる。
電車で考えると、よくわかります。一度、運転席の後ろで、観察してみていただきたいのですが、運転席には「A」という単位が書かれたメーターがあります。あれは、アンペアのAなのです。何を表示しているかといえば、アンペアですから電流なのです。電気で動いているので、電流計がついているのですね。出発して加速し始めると、電流計の針は、どんどん上がっていきます。そして、一定のスピードになると、運転士は、実は電流を切ってしまうのです。
電車というものは、非常に重たいものですから、空気抵抗を計算に入れなくていいのです。
走り出すと、電車の重さで加速度が保たれるのですね。京浜急行の快特がいちばんわかりやすいのですが、京急は1OOキロ以上で走る区間が多いので、よく観察すると、スピードの乗っている区間は、電流を切っています。
ということは、最初に力を入れるとき――出発するときに電気を必要とするわけです。となると、走ったり止まったりを繰り返す、各駅停車のほうが、実は電気の使用量が多いのです。
特急のほうがはるかに電気代は安くて済む。だから実は、特急料金を取られるのはおかしいのです。もちろんその理屈で考えると、各駅停車に乗ったときに、より多くの運賃を払わなければいけないことになってしまいますが……。
『「正しい」とは何か?』武田邦彦著 小学館より
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