二〇〇七(平成十九)年九月十二日、安倍首相が辞任しました。罵倒や嘲弄が安倍氏に集中しました。しかし、日本人は首相辞任をどのように理解すべきなのでしょうか。
私はシドニーの日米首脳会談が発端だと推察します。伏線として、小沢一郎氏がシーファー米大使を召喚してテロ特措法反対を通告していたことが作用したと思います。
ブッシュは首相にインド洋での支援活動の継続を強く要請したことでしょう。諾と首相は約束したに違いありません。拉致問題を言う首相に対して、米国大統領は北朝鮮を取り込むのは日本の利益でもあると強く説得したのではないでしょうか。背景には、北朝鮮の世界屈指の膨大なウランやレアメタル資源の存在と、その確保を狙う中露との関係が話題になったかもしれません。北朝鮮の清津港や羅津港が中国のミサイル潜水艦の基地になることの日本への脅威は決定的なものがあります。日米首脳会談のトップシークレットが漏らされることはないでしょうが、首相はかなりの衝撃を受けたものと、私は推察します。
とにかく万難を排して、インド洋での活動継続は実現しなければならない……もし約束が果たせないときには……と首相の胸に去来したものは何だったのでしょうか。
シドニーでの記者会見で、首相は「職責を賭して……職に恋々とするものではない」と言明したのは何故だったのでしょうか。
国対委員長を通じて「……挨拶を……」と小沢氏に会談を申し入れたが断られ、辞任の記者会見でそれに触れたら「責任転換だ」と罵倒・嘲笑されました。私は首相が気の毒でなりませんでした。
また、インド洋が日本の運命の海になるのかと、私は思いました。七章に「ああ、インド洋」として帝国海軍の亡国の大失敗を書いています。六カ国協議の主たる狙いのひとつは日本の核武装の阻止です。アメリカの核の傘など幻想です。アメリカは自国民の生命を日本防衛の為に大量に犠牲にしてくれるのでしょうか。そして、そんな事が可能でしょうか。安保条約のどこにもそんな約束は書かれてはいません。世界一の原子炉を作れるのが日本です。空母でも核兵器でも、その気になれば何隻でも何発でも製造できるのが日本です。こんなことは世界の常識です。アメリカ・ロシア・中国・朝鮮と核武装した国々に囲まれて、日本は生きていかねばなりません。それには、日本人は心棒となる歴史観と国家観を持たねばなりません。
北朝鮮のインフラ整備・食糧支援・エネルギー支援………そのお金はどの国が出すのでしょう。日本が出さないのは確実です。日本抜きでやることです。ロシア・中国・朝鮮を合算してもGDP比で日本には遠く及びません。日本人は昴然として、核武装の可否について論議を始めようではありませんか。日本が生存する道の論議です。
「三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたい」と高杉晋作は歌いました。本当に鳴烏と蠅は五月蠅(うるさい)ものです。
小沢一郎氏も金正日氏も六十五歳です。安倍晋三氏はまだお若い。志があるだけに「五内ために裂く」心境だと拝察します。立派な業績を残されました。朝寝して御軽快の上で、高杉晋作のように決起して下さい。
桂冠のニュースを聞くや強(こわ)残暑
以上は論考ではなく俳文でしかありません。
『続日本人が知ってはならない歴史』若狭和朋著(2007年)