租税には國全體の費用となる國税と府縣の費用となる府縣税と、市町村の費用となる市町村税とがあります。國税は法律できまり、府縣税・市町村税は法律て定められた範圍内で、それぞれ府縣會・市町村會の議決できまります。我等はこれ等のきまりに従って税金を納めるのです。
我等は自ら進んで租税を納め國を盛にする心掛が大切です。我等がもし納税に關する申告を怠ったり、納税の期限に後れて督促を受けたりすると國に無益の手數をかけます。まして申告を偽つて脱税をはかったり、期限に後れて滞納處分を受けたりするやうなことがあっては、自分の恥であるばかりでなく、國の仕事の妨になります。
帝國議會は憲法の規定によって毎年召集され、我が國の法律や豫算などを議決する大切な機關です。議會で議決したことは天皇の御裁可を経て公布されます。

帝國議會は貴族院と衆議院から成立ってゐます。貴族院は皇族・華族の議員や勅任された議員で組織され、衆議院は選擧櫂をもつてゐる國民が公選した議員で組織されてゐます。
我等は將來、帝國議會の議員を選攀し、或はその議員に選擧されて國の政治に參輿することが出来ます。
帝國議會の議決は國の盛衰に關係しますから、したがつて議員の適否は國民の幸不幸となります。我等はさきに市町村會議員を選攀する心得を學びました。帝國議會の議員を選攀するにも、同様によく注意して候補者の中から性行が善艮であり、りつばな考をもつてゐる人を選擧しなければなりません。自分だけの利益のために投票し、又は他人に強ひられて適任者と思はない人に投票してはなりません。また理由もないのに、自分の選攀櫂を棄てて投票しないのは、自分のすべきことを怠って自分を軽んずる行です。
また帝國議會の議員に選ばれた者は、その職責の重大なことを思ひ、常に國事を以て念とし、かりそめにも私情に動かされず、忠賓に職責を果さなければなりません。
『国民の修身』監修 渡辺昇一