企画力・創造力と言われる能力がある。これは性格ではないが、人物像を左右する一つの大きな要素と言える。単純な作業の繰り返しとか、人の真似ではなく、今までなかったものを創造する能力があれば、「あの人は才能がある」と評される―つの要因となる。
こうした能力は食傷と財の良好な働きによる事象である。自分の意見・考えを生み出すのは食傷の作用であり、食傷が財を生じることは社会的価値を生み出すことになる。したがって食傷があっても財に結びつかないなら、企画倒れといったことになる。
それどころか、価値を生み出さない言動は悪因を招くことともなる。企画倒れとなるのは、財の作用が不良であるため、現状の認識が不足していたり、表現が適切ではなく、自分の考えが人に伝わらないからであると考えられる。
日干が強であって食傷が日干に隣接しているなら、頭の回転が速く、急なことにも素早く対応できる能力があることになる。しかし、その食傷が財に通じない場合、多くは言動が悪因を振りまく原因となってしまう。口にしたことが、ことごとく人に誤解される、悪意はないのにもかかわらず、言葉が人を傷つけるとか、天に向かって唾を吐くようなことになってしまうのである。ただ、矢継ぎ早に言葉を発することのできる頭の回転の速さがあるので、ケンカとか闘争的な場面に遭遇した際には作用は役に立つことになるとは言える。
逆に日干が弱であるのに、食傷が財を生じるのは、方向性を間違えたり、早急すぎて準備不足であったりして、何事もうまくいかないことになってしまう。価値ではなく、役に立たないものばかり生み出してしまうことになる。
次はシュールレアリスムの巨匠、画家サルバドール・ダリの命と運である。1904年5月11日午前8時45分、スペインのフィゲラスの生まれである。出生時間はその著書「我が秘められた生涯」(新潮社刊)による。
日干乙木で巳月火旺に生まれ、月干に印も比劫もなく、食傷が旺じるので、旺は逆転して水旺として見ることになる。
旺の逆転により水旺となるため、日干乙木は相令。日干を取り巻く干は、食傷、財、官殺であり、日干が弱であることは明らかであることになる。
日干は時干の庚金に剋され、日の蔵千の食傷の丙火に洩らさなくてはならず、既述の剋洩交加の状態になっている。また、大運を見ると、己巳から庚午、辛未と巡り、弱い日干をさらに弱めることになり、一点も好いところがない。しかし、旺の逆転によれば、印が旺じることになり、進気であること、そして生家の環境を示す年干に腸干の比劫の甲木があることが救いとなり、成長期にはいろいろ問題はあったようではあるが、 大事に至ることなく、これらの大運を過ごすことができたものと言える。
年干に甲木があることの意味・作用であるが、日干弱であるので甲木は望ましい干であり、かつ甲木が月干の己上を剋してくれているため、日干乙木は己土を剋すために力量的なマイナスを被ることがない。
つまり、定位の視点から言うなら、年干に甲木があることは、生家の環境が良いことを示し、また最悪とも言える大運さえ耐えしのぐことができるような生まれながらの身体的な頑強さがあることを示していることになるのである。
ダリは、子どもの頃から病気がちで、40歳を過ぎる頃まで健康に不安をかかえ、常に死の恐怖をいだいていたという。大運が徐々に良化するにつれ、本来の頑強さを取り戻し、世界的に有名な画家として活躍したのは今さら言うまでもないことである。
晩年80歳甲子年(1984)、全身に大やけどをして車椅子の生活になり、83歳戊辰年(1988)に亡くなられている。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より
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