次に、兄弟姉妹の構成とか性格とも密接な関連をもつ、成長期における育てられ方の見方について説明することにする。
通変の定義では比劫は兄弟姉妹を示すものであるが、比劫の数とか四柱八字中の位置を見ても、兄弟姉妹の構成は断定できない。しかし、日干に隣接する他の通変によって、長子的に育てられたのか、末っ子的に育てられたかは、正確に知ることができる。
ここで言っ「長子的」ということの意味は、親の庇護を多く受け、期待され、またしつけが厳しい中で育ったということであり、「末っ子的」とは、放任されて自由に育てられたということである。
通変の生剋制化の作用の「内向き」「外向き」の相違に、具体的な事象に結びつく要因があることはすでに理解されていると思うが、日干に印あるいは官殺が隣接している場合は、長子的に育てられたと見ることになり、食楊あるいは財が隣接している場合は、末っ子的に育てられたと見ることになる。
印と官殺、そして食傷と財が入り交じることもあるので、どちらとも断定しかねる場合もあるが、例えば、日干に隣接する干がいずれも印か官殺であるような場合は、実際に長子であるかどうかは断定できないが、長子的に親の庇護を多く受け、育ったものと断定することができる。例えば
○日干戊土 卯月木旺
日干は戊土で卯月木旺に生まれ死令。月干に印はなく、官殺が旺じるので旺は逆転し、土旺として見ることになる。
旺の逆転により日干戊土は旺令となり、時干に丙火があり日千を生じ助けている。月干と日の蔵干に官殺の乙木があるが、陰干であるため陽干の日干戊土を剋して弱めることはできないため、日干は一応強と見ることになるが、日干は旺じてはいても比劫の扶けがなく、時干に印の助けがあるだけなので、日干の強弱が変化する可能性があり、運歳の見方はやや難 い部類に入る例となる。
日干に隣接する干は、官殺の乙木と印の丙火であるため、典型的な長子的な四柱八字となる。
この命が長子であるとするなら、年干の比劫の戊土は弟が生まれる可能性を示していることになるが、実際に二人兄弟の長男である。
○日干庚金 午月火旺
日干は庚金で、午月火旺に生まれ死令。月干に印も比劫もなく、官殺の火が旺じているので、旺は逆転し、金旺として見ることになる。旺の逆転により日干庚金は旺令となり、時干の庚金は時の蔵干に戊土があるため、有力な扶けとなる。年干の庚金は、月干に壬水があるため日干の直接的な扶けとはならない。しかし日の蔵干に財はあっても死令であり、月干に壬水はあっても、その日干に与える力量的なマイナスはそれほど大きくはないため、日干は強と見ることになる。右のように日干に隣接するのが食傷と財だけであり、印も官殺もないのは、 典型的な末っ子的に育てられた四柱八字と言える。実際は三人兄弟の末っ子である。
兄弟姉妹の構成は通変から断定できることではないが、この命の場合は天干の比劫の数と実際の兄弟の数が一致する。年月にある比劫は兄姉で、時にある比劫は弟妹であるという見方があるが、この実例からしても実証的に妥当性はないと言える。比劫だけで兄弟姉妹のことは知ることができないのである。
また、陰陽という二元論的な世界観においては、男と女は相対するものと考えられ、男は陽であり、女は陰であるとされている。
これを陽男陰女の原則と言う。
比劫は兄弟姉妹に関わるが、陽干の比劫があれば兄弟であり、陰干の比劫があれば姉妹と見るのが原則となる。しかしこれはあくまで原則でしかなく、該当しないこともある。陽干が男性を示し、陰千が女性を示していることが多いのは事実であるが、陽であること、陰であることの本質的な意味から事象を判断すべきなのである。
では、陽干の比劫があり、日干に隣接している場合の事象は、
① 男女を問わず、性格が強く、いい意味、悪い意味を含めて影響力の大きい兄弟姉妹がいる。
② 経済力があって大変頼りになる兄弟姉妹がいる、あるいは逆に経済力がなくてお荷物になる兄弟姉妹がいる。
ということになる。天干に比劫の陽干があるのに、実際は兄ではなく姉がいる場合は、その姉は、個性的で強い性格であったり、また経済的に力があるものと言える。
陰干の比劫がある場合は、
① 性格がおとなしい、あるいは頼りにならない兄弟姉妹がいる。
② 経済的に頼りにも、また逆に負担にもならない兄弟姉妹がいる。
ということになる。したがって、現在の日本の状況からすると、結婚後も仕事を持ち続ける女性が増えたと言っても、いまだ男性社会であるため、陽干は男性で、陰干は女性のことが多く、陽男陰女の原則が当てはまる場合が多いことになるのである。
また、生家の環境を左右する要素の一つとして、経済的に豊かであるかどうかという問題がある。この生家の経済的な環境を見るための視点には二つある。その一つは、
① 成長期の大運が良好であること。もう―つは、
② 年干に、日干の強弱の視点からして望ましい干があること。
②は定位の考え方がもとになっている。日干弱であるなら、年干に印か比劫があれば、成長期の環境は良好で、おそらく経済的にも恵まれていたであろうと推察することができるのである。例えば、
○日干辛金 寅月木旺
日干は辛金で寅月木旺に生まれる。月干に印があり、財の木が旺じるので、旺の逆転はなく、暦のままの蔵干で日干の強弱を見ることになる。
日干辛金は囚令で、月干に印の戊土はあるものの、時干と日の蔵干に丙火があるため、日干は弱と見ることになる。
日干弱であり、年干に陽干の比劫である庚金があることから、成長期の環境は良好で、おそらく経済的にも恵まれていたであろうと推察することになる。
また、日干に隣接する千は、印と官殺ばかりなので、長子的に育てられたものと見ることができるが、実際に長子である。
以上により、成長期の環境を決定する大きな要因である、父母、兄弟の構成と、生家の環境を推察することになる。そしてその影響下、性格の基本的な部分が形成されることになるのであるが、その見方について、次に総括的に説明していくことにする。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より
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http://www.shihei.com/shihei/calc/