生年月日時を干支暦によって四柱八字に置換し、次に旺の逆転を処理した後に、最終的に四つの天干、四つの蔵干、合わせて八つの干が表示されることになるが、四柱推命では、具体的事象を見るために、これら八つの干の生剋・幇の作用のあり方を見て、 日干が強いのか、弱いのかを知ることが、具体的事象を見る前に必要不可欠なこととなる。
四柱推命の聖典と言われている「滴天髄」には、 日干の強弱を知るための具体的な説明はまったく見ることはできないが、その重要性について次のように述べられている。
能知衰旺之奨機。其子一二命之奥。思過半突。
《衰旺の真機を知るに能(あた)うれば、その三命(=四柱推命)の奥において、思いは半ばを過ぎるものである。》
右の「衰旺」とは、旺相死囚休ではなく、日干の強弱を指している。続けて言われていることは、日干の強弱を知ることができれば、四柱推命を半分は理解し終えたようなものである、という意味である。
しかし奇妙なことに、日本では一般の書店で入手可能な四柱推命の書を見ても、またネット上の四柱推命のサイトにおいても、日干の強弱の重要性について触れているものはごく少数派なのである。ただ単に、十二運とか通変、あるいは神殺の事象を並べ立てて、安易なパターン化と簡略化に終始したり、生まれた時間はわからなくても大丈夫などと言って、三柱推命を行なっているのである。『滴天髄』などの四柱推命の原典に言われていることは、まったく無視されているのである。
なぜこうした状況になってしまっているのか。その理由は、日干の強弱の見方には、誰でもすぐに理解できるような方法が存在しないからであろうと推測できる。日干の強弱を評価することは、四柱推命で具体的事象を見る際に最も重要な視点であるが、同時に最も会得するのに苦労する項目となっているのである。
一般の書店に並んでいるような本の場合、少しでも手っ取り早く日干の強弱を理解できるよう配慮し、四柱八字中の干の個数を数えたり、旺相死囚休に数字を当てはめたり、あるいは生旺墓絶や十二運に力量を知る根拠を求めたり、正確さを犠牲にして簡略化した方法を紹介している。これらの方法は、初歩の段階には日干の強弱を知る手助けになる面はあるが、決して正しい方法ではないことを知っておかなければならない。中には、そうした簡略化した方法を利用して、計算で日干の強弱を出し、四柱推命をソフトウェア化しているものもある。市販のソフトもあるし、ネット上にも同類のものがある。しかし、そうしたソフトで、もし仮に日干の強弱を正しく出すことができたとしても、それを具体的な事象に適用する段階の思考過程までは自動化できないようで、ソフトの内部では、計算結果をいくつかのパターンに分け、あらかじめ用意してある回答の中から選択し表示するという、本来の四柱推命とはまったくかけ離れた処理が行なわれている。ネット上に、生年月日を入力してボタンを押すとすぐに答が出る四柱推命のソフトがあるが、そうしたソフトに生年月日を1日ずつずらして回答を求めると、周期的に同じ結果が出ることから、その内部処理のあり方を確認することができる。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より