五行のうち、木と土には、燥湿という性状が言われている。燥とは、乾いていることであり、湿とは、湿っていることである。燥となる原因は火にあり、湿となる原因は水にあり、即物的な言い方をすると、木と士は、火と水との関わりにより、乾いたものと湿ったものという二つの状態の違いがあるとされているのである。
木は水と隣接することにより湿り、それはあたかも湿った薪に火が着きにくいように、火を生じる作用が劣ると、 古来より言われている
士が火と隣接すると、乾き切って金を生じる作用が劣ると考えられているのである。前者を湿木無炎、後者を燥士不能生金という。
五行の説明のところで述べたように、木は草木・樹木ではなく、土は砂泥・岩石ではないので、即物的に燥湿に結びつけるのは、たとえを本質と混同した安易な発想であると思われるが、この燥湿の視点は、実証的に妥当性があり、無視することはできないと考えている。例えば、土は皮膚に関わるが、水がなく、乾き切った土であると、その人は乾性の皮膚病になることがあるし、逆に水が多くあって湿った土であると、湿性の皮膚病となることがあるのである。
この木と土の燥湿という性状は、人間のどのような生理的機能に対応しているのかは不明であるが、具体的な事象を見る際の―つの視点であることは間違いないと言えるのである。
なお、この燥湿の視点は、「滴天髄」や「造化元鎗(ぞうかげんやく)」「窮通賓鑑(きゅうつうほうかん)」に見ることができ、「滴天髄」では「寒暖燥湿」といわれ、四柱八字の見方には、燥湿のほか寒暖という視点があるとされている。また「造化元鍮」「窮通賓鑑」では、季節との調和という視点から、調候という論議が展開されている。「造化元鍮」「窮通賓鑑」はともに、近年最も活躍した徐築吾氏の編著によるため、日本でもその論を採用する四柱推命の専門家が多い。中には、「窮通密鑑」に掲載されている「調候用神表」をそっくりそのまま丸写ししているものもあるくらいである。
しかし、四柱推命と日照時間の長短との関連は見ることができるが、四柱推命と気温は無関係である。ところが、寒暖とか調候という視点には、旺じる五行と気温が密接に関連していると考えているような錯誤が見られるし、また実証性も認められないので、本書では燥湿のみ採用することにしている。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より