時々、このような形で訳の分からない記事が載ることをお許しください。
実は、自分の勉強などのために、ネット上に「メモ」として残しているのです。以前は、手帳を使っていましたが、今では便利なネットが手帖に代わりました。もちろん、手帳の凄さは変わりませんが、ネットは量や図、絵などそのメディアの種類を問わなかったり、様々な情報を載せられるので、便利に使っているのです。
自分の健康状態から、今腎障害を懸念するデータがかかりつけ医から示され、注意を促されました。昔、自分のパートナーが癌になったとき、様々調べて漢方を処方し、朝早く病院に届けて飲ませていました。後で、その主治医から「お前は医者でもないのに、なんでそんなことをするのか?」とえらく叱られましたが、今ではほろ苦い思い出となっています。
その昔、今は閉店してしまった秋葉原の「紀伊國屋漢薬局」から生薬を購入して、煎じていました。その方法を自ら試そうとしているのです。今回は、腎障害を防げるかどうかです。
そのための、メモですので、悪しからず。

P145
「矢数道明・矢数圭堂博士の漢方処方」 主婦の友社版より

腎炎・ネフローゼ症候群

急性腎炎は子どもに多く、扁桃炎や上気道炎のあとで発病し、冷え、疲労、カゼなどで起こることもあります。顔などにむくみがあらわれ、頭重、倦怠感があり、尿がにごってタンパク血尿が見られます。また、血圧が上昇します。
そして、急性腎炎の一部は慢性腎炎に移行し、その少数は尿毒症などを起こす危険があります。発病の初期には、絶対安静と食事療法がたいせつで、タンパク質や塩分を制限します。
慢性腎炎は、急性腎炎から移行するものと、最初から慢性の経過をとるものとがあり、検尿をきっかけとして発見されることもあります。腎臓の糸球体の毛細血管の炎症が強く、タンバク尿と血尿がつづき、高血圧、腎機能の低下などが見られます。
ネフローゼは、尿細管の変性で、腎炎と区別されていましたが、最近では糸球体にも変化のあることが普通で、慢性腎炎の一つの病型と考えられるようになり、高度のタンバク尿、全身の浮腫、低クンパク血症、高脂血症が見られ、ネフローゼ症候群というようになっております。しかし、子どもの楊合には、最初からネフローゼとして発病することが少なくありません。
食事療法としては食塩を制限し、尿中にクンパクが多量に出てしまうので、タンパク質は摂取しなければなりません。漢方的には、腎炎とネフローゼを区別する必要がないので、治療法はまとめて述べることにします。

●五苓散(ごれいさん)
「傷寒論(しょうかんろん)」「金匱要略(きんきようりゃく)」

処方:
     沢瀉(たくしゃ)      6.0g
     猪苓(ちょれい)      4.5g
     茯苓(ぷくりょう)      4.5g
     白朮(びゃくじゅつ)      4.5g
     桂枝(けいし)      3.0g

浮腫、尿利減少、口渇を目標として、急性・慢性腎炎、ネフローゼに用いられます。この処方は、頭痛や嘔吐を治す効果もありますから、これらの症状のあるものに用いてもよいものです。
鹿児島大学の小島教授の実験によると、うさぎの大腿部に生理的食塩水を皮内注射し、人工的浮腫を作り、これに五苓散を経口投与したところ、体内の水分量が減少し、水分の偏在に対して効果が認められたということです。私が東京医大薬理で、健康マウスを用いて実験したときには、対照(蒸溜水のみ投与)と比較して著明な利尿効果はありませんでした。
このことは、五苓散は健康体に対して利尿効果はありませんが、水分の偏在する病的状態に対して調整的に作用し、それを好転させる効果があることが実験的に証朋されたものと考えられるものであります。

◎治癒実例
ネフローゼの浮腫と腹水が五苓散で消失
10歳の男子。全身の浮腿がはなはだしく、腹水が著明で、腹囲は90㎝にもなり、下肢からは漏液がしたたり流れるほどの浮腫が認められます。尿量は減少し300-500ccとのことです。呼吸困難、せぎがはげしく、サビ色の痰で、肺気腫を起こしていました。
ロ渇と発汗と、口中につばがたまり、吐き出すので、五苓散を与えたところ 少しずつ尿量が増加し、10日後から急激にふえ、最高4350㏄の尿量があり、2 週間の合計が、36ℓに達し、全身の浮腫と腹水は消失しました。

●越婢加朮湯(えっぴかじゅうとう)
「金匱要略」

処方:
麻黄(まおう)      6.0g
石膏(せっこう)      8.0g
大棗(たいそう)      3.0g
甘草(かんぞう)      2.0g
白朮(びゃくじゅつ)      4.0g
乾生姜(かんしょうきょう)      1.0g

急性の初期で、貧血はなく、食欲良好で脈に力があり、浮腫、尿利減少、煩躁などのある場合に用いられます。

◎治癒実例
姉妹の急性腎炎が越婢加朮湯で全治
7才と5才の少女。姉妹がほとんど同時にカゼをひき、扁桃炎から急性腎炎になりました。全身浮腫、小便不利、微熱があり、脈が沈んで、越婢加尤湯を服用すると、小便がよく出て、浮腫も全くとれ、20日くらいで尿タンパクも消え、全治しました。

●小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
「傷寒論」「金匱要略」

処方:
半夏(はんげ)      6.0g
麻黄(まおう)      3.0g
芍薬(しゃくやく)      3.0g
甘草(かんぞう)      3.0g
桂枝(けいし)      3.0g
細辛(さいしん)      3.0g
乾生姜(かんしょうきょう)      1.5g
五味子(ごみし)      1.5g

急性腎炎の初期で、浮腫があって血圧の充進が認められるものに応用されます。浮腫に緊張があり、血圧が高く、せきや喘鳴(ぜんめい)などのあるもの、心下部に抵抗のあるものを目標にします。越婢加尤湯より自覚症状は軽く、煩躁がないものに効果があります。

●小柴胡湯加茯苓黄連(しょうさいことうかぷくりょうおうれん)
「傷寒論」

処方:
     柴胡(さいこ)      7.0g
     半夏(はんげ)      5.0g
     黄芩(おうごん)      3.0g
     大棗(たいそう)      3.0g
     人参(にんじん)      3.0g
     甘草(かんぞう)      2.0g
     茯苓(ぷくりょう)      3.0g
     黄連(おうれん)      1.5g
     乾生姜(かんしょうきょう)      0.5g

慢性腎炎、ネフローゼで、浮腫はなく、あっても軽度のもので、胸脇苦満があり、発熱悪心、食欲不振などのあるものに用いられます。
この場合には、生姜は抜いて用います。また、柴苓湯、すなわち小柴胡湯と五苓湯を合わせたものも生姜を抜いて用います。

●八味丸料(はちみがんりょう)
「金匱要略」

処方:
乾地黄(かんじおう)      5.0g
山茱萸(さんしゅゆ)      3.0g
山薬(さんやく)      3.0g
沢瀉(たくしゃ)      3.0g
茯苓(ぷくりょう)      3.0g
牡丹皮(ぼたんぴ)      3.0g
桂枝(けいし)      1.0g
附子(ぶし)      0.5~1.0g

慢性腎炎、ネフローゼで、浮腿、タンパク尿、尿利減少、口渇、腰痛、高血圧などの認められものに用います。
牛膝(ごしつ)、車前子(しゃぜんし)を加えた牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は八味丸の作用をさらに増強させたものであり、また釣藤(ちょうとう)、黄柏(おうばく)を加えることもあります。

●分消湯(ぶんしょうとう)
「万病回春(まんびょうかいしゅん)」

処方:
蒼朮(そうじゅつ)      3.0g
白朮(びゃくじゅつ)      3.0g
茯苓(ぷくりょう)      3.0g
陳皮(ちんぴ)      2.0g
厚朴(こうぼく)      2.0g
香附子(こうぶし)      2.0g
猪苓(ちょれい)      2.0 g
沢瀉(たくしゃ)      2.0g
枳実(きじつ)      1.0g
大腹皮(だいふくひ)      1.0g
縮砂(しゅくしゃ)      1.0g
木香(もっこう)      1.0g
灯心草(とうしんそう)      1.0g

ネフローゼで浮腫や腹水があって、 心下部は痞硬(ひこう)し、腹水は勢いがあり、圧迫したくぽみは間もなく元に戻るもの(実腫)を目標に用います。

◎治癒例
子供のネフローゼが分消湯で治り健康体に
4才の男児。扁桃炎からたびたび腎炎を繰り返したことがあり、これが数回目です。全身のむくみがひどく、新しい利尿剤も効かなかったということです。分消湯で少しずつ尿盤が増加し、1か月後には全くむくみがとれて骨と皮ばかりとなりました。クンパク尿は強い陽性でしたが、1年間服薬をつづけて、すっかり陰性となり、健康体になりました。

●補気建中湯(ほきけんちゅうとう)
「済生全書(さいせいぜんしょ)」

処方:
茯苓(ぷくりょう)      5.0g
白朮(びゃくじゅつ)      4.0g
陳皮(ちんぴ)      3.0g
蒼朮(そうじゅつ)      3.0g
人参(にんじん)      3.0g
沢瀉(たくしゃ)      3.0g
麦門冬(ばくもんどう)      3.0g
黄笒(おうごん)      2.0g
厚朴(こうぼく)      2.0g

虚証で元気が衰えたもので、浮腫、腹水が長引いている湯合に用います。尿最が減少し、浮腫は力なくプヨプヨで、圧迫による陥没がなかなか元に戻らないもの(虚腫)を目標とします。
「医林集要」の補中治湿湯(ほちゅうじしつとう)は、本方より沢潟を去り、当帰、木通、升麻を加えたものです。

●導水茯苓湯(どうすいぷくりょうとう)
「奇効良方(きこうりょうほう)」

処方:
沢瀉(たくしゃ)      3.0g
茯苓(ぷくりょう)      3.0g
白朮(びゃくじゅつ)      3.0g
麦門冬(ばくもんどう)      5.0g
桑白皮(そうはくひ)      1.0g
蘇葉(そよう)      1.0g
大腹皮(だいふくひ)      1.0g
縮砂(しゅくしゃ)      1.0g
木香(もっこう)      1.0g
灯心草(とうしんそう)      1.0g
檳榔子(びんろうし)      2.0g
木瓜(もっか)      2.0g
陳皮(ちんぴ)      2.0g

虚証と実証の中間型の人の浮腫で、熟したうりのようにはれ、体を転がすこともできないものに用いられます。ネフローゼで他の薬が効かないものに試みるべき処方です。

●木防已湯(もくぼういとう)
「金匱要略」

処方:
木防已(もくぼうい)      4.0g
石膏(石膏)      10.0g
桂枝(けいし)      3.0g
人参(にんじん)      3.0g

慢性腎炎で、浮腫、呼吸促迫、心肥大、喘嗚などがあって、心下部がかたく抵抗感のあるものに用います。

●七物降下湯(しちもつこうかとう)
「修琴堂方(しゅうきんどうほう)」

処方:
当帰(とうき)      4.0g
芍薬(しゃくやく)      4.0g
川芎(せんきゅう)      4.0g
地黄(じおう)      4.0g
黄柏(おうばく)      2.0g
黄耆(おうぎ)      3.0g
釣藤(ちょうとう)      3.0g

腎炎または腎硬化症を起こして血圧の高いもの、また、高血圧が慢性化して最小血圧の高いものに用いて効果があります。

●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
「金匱要略」

処方:
当帰(とうき)      3.0g
川芎(せんきゅう)      3.0g
芍薬(しゃくやく)      6.0g
茯苓(ぷくりょう)      4.0g
白朮(びゃくじゅつ)      4.0g
沢瀉(たくしゃ)      4.0g

虚証の腎炎、ネフローゼ、また妊娠中毒症で浮腫、タンパク尿、高血圧のあるものに用いられます。貧血、やせ型、色白、脈沈弱、腹壁軟弱、心下部拍水音(胃内停 )などを目標に用います。

●防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)
「金匱要略」

処方:
防已(ぼうい)      5.0g
黄耆(おうぎ)      5.0g
白朮(びゃくじゅつ)      3.0g
     大棗(たいそう)      3.0g
甘草(かんぞう)      1.5g
乾生姜(かんしょうきょう)      1.0g

色白で、筋肉がやわらかく、水太りの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下腹に浮腫を認め、体が重い、ひざがほれて痛いなどの症状を目標にします。

●防已茯苓湯(ぼういぷくりょうとう)
「金匱要略」

処方:
防已(ぼうい)      3.0g
黄耆(おうぎ)      3.0g
桂枝(けいし)      3.0g
茯苓(ぷくりょう)      6.0g
甘草(かんぞう)      2.0g

陰証で手足に浮腫があり、のぼ せ、しびれ、冷え、貧血などが見られるものに用いられます。

●真武湯(しんぶとう)
「傷寒論」

処方:
茯苓(ぷくりょう)      5.0g
芍薬(しゃくやく)      3.0g
白朮(びゃくじゅつ)      3.0g
乾生姜(かんしょうきょう)      1.0g
附子(ぶし)      0.5~1.0g

陰虚証で新陳代謝が沈衰しているものに用いられる処方で、小便不利、めまい、動悸などを認め、脈ほ沈微または浮弱で、全身倦怠感、手足の冷え、浮腫などをあらわし、全体的に生気に乏しいものを目標にします。

●猪苓湯(ちょれいとう)
「傷寒論」「金匱要略」

処方:
猪苓(ちょれい)      3.0g
茯苓(ぷくりょう)      3.0g
滑石(かっせき)      3.0g
沢瀉(たくしゃ)      3.0g
阿膠(あきょう)      3.0g

本方は主として下腹の熱を去るという意味で膀脱 炎や尿道炎に用いるものですが、相見三郎博士は腎炎やネフローゼに、本方単独または腹証により桂枝衣苓丸料(けいしぶくりようがんりよう)、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんびとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)などと合方してよい場合が多いと述べられています。

漢薬局