『滴天髄』『子平奨詮』『星平會海全書』『三命通會』、その他、四柱推命の書や歌訣のすべてに、次のような 一文を見ることができる。

看命先看日主
《看るにはまず日主を看よ 》
あるいは、

以日為王
《日をもって主とする》
四柱推命においては、生年月日時を干支暦で出し、その中の日の干を日干、日主、あるいは身主と言い、四柱八字を見る視点の中心とする。このことは四柱推命において、もっとも基本的であり、重要な決まりである。そこで、日干と他の干との生剋・財の作用を論じるのに都合が好いように、通変と言われる用語が用意されている。
通変は、漢代の京房という人物の易説を指すこともあるが、四柱推命では「変化の理に通じる」という意で、日干を中心に据えて生剋・胴の動向を見る視点として使われている。
また、通変の法は、陰陽の関係と、五行の生剋制化と開の関係の組み合わせにより構成されているので、「2(陰陽)× 5(五行)=10」の関係があることから、10の名称が定義されている。しかし、陰陽の違いは後から考慮したほうが、かえって都合が好いので、本書では、陰陽の関係を除いた五つに分類する方法を採用し、話を進めることにする。
この通変を五つに分類する方法は、本書独自のことではなく、中国の古書中にも多く見ることができる。
通変の名称の定義は次のようになる(カッコ内は、10に分類した場合の通変の名称。)

日干と同一の五行を比劫(ひごう)とする(比肩・劫財。)
日干が生じる五行を食偏とする(食神・傷官。)
日干が剋する五行を財とする(偏財・正財。)
日干を剋する五行を官殺とする(七殺あるいは偏官・正官。)
日干を生じる五行を印とする(偏印・印綬。)

右の関係を図示すると次のようになる。

通変の図.jpg
日干別通変一覧図.jpg

日本の四柱推命では、通変を、通変星とか変通星と言い、なぜか「星」をつける。大した問題ではないとも言えるが、星をつけたため、ここでも四柱推命は占星術であるという誤解を招いている。
また、日本には通変それぞれに、もともと良好なものと不良なものがあるとする考え方がある。例えば、官殺は日干の陰陽により、正官と偏官に分けることができるが、正官は正しい官であり、偏官は偏った官であるとして、通変自体に吉凶を論じているのである。しかし、通変の作用の良し悪しは後述の日干の強弱によって決定されることであるから、まったく誤った考え方である。そうしたものに惑わされないようしていただきたい。
次は前掲の平成17年(2005)10月15日午後8時生まれの四柱八字を蔵干とともに示したものである。

四柱八字2005101508.jpg

この四柱八字では日干は壬水となる。この壬水を中心にして通変を見ると、年干の乙木は陰干の食傷、月干の丙火は陽干の財、時干と日支蔵干の庚金は陽干の印である。年支の酉と月支の戌の中には辛金があり、辛金は日干壬水から見ると、陰干の印である。時支の戌中の戊土は、陽干の官殺となる。また、月支の蔵干が辛金であることから、金旺の生まれであることを知ることができる。辛金は印であるから、印が旺じることになり、日干の壬水は相令であることになる。
具体的な事象を論じる際には、十干とともにこの通変が大変重要な役割を果たすことになる。通変の事象を実際の場面で自由自在に駆使できるかどうかは、ある意味四柱推命の醍醐味とも言える部分である。その見方、考え方につ いては、後で詳しく説明することになる。

「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より