十二支には五行としての性状があることを既述したが、実は十二支は五行そのものなのである。しかし、天の気である干は五行としての性状を純粋な形で表出するが、地の気である十二支の五行としての性状は、蔵干という形で干をその中に蔵することにより、五行としての作用を持つことになるため、やや複雑な様相を呈することになる。
十二支のもともとの役割は、節月の巡りを表示することなので、その蔵干の構成は、四季の五行の旺の変遷と密接に関わっているべきものである。しかし、現在、巷間の四柱推命の書に見ることのできる蔵干は、その長い歴史の中で、多くの人が試行錯誤した結果、雑多な説を取り込んでしまったものを採用しているため、その構成には釈然としない奇妙な点がある。以下、蔵干の構成の矛盾点を排除し、十二支の根源的な作用を表示するように蔵干の構成を検討し、整理し直すことにする。
『星平會海全書』中の「論天地干支暗蔵総訣」で言われている蔵干が最もよくまとまっており、また採用する人も多い。その内容をまとめて列記すると、次のようになる(原文には、一日に満たない端数も記されているが重要ではないので省略する。)

十二支の蔵干.jpg

右の見方を説明すると、例えば、寅月は、節月の始まりから最初の7日間が戊土、続く7日間が丙火、残りの16日間が甲木、としているのである。また、寅中の戊土を余気、丙火を中気、甲木を本気と言う。続く卯には中気はなく、余気甲木、本気乙木、申は、己土と戊土の二つで余気とされている。つまり、寅月の場合で言うなら、寅には三つの干が蔵されていて、時間の経過とともに、その該当する干が変化していくとされているのである。
ちなみに「星平會海全書」は、巷間に散逸していた五星の術と四柱推命に関する文献を編媒した書であるため独自の内容は一切ない。しかし、その構成から、編築に携わった人物の優秀さを感じさせられる名著であると言える。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より