四柱推命と月(moon)には直接的な関係はないが、古来より、月の満ち欠けの周期と人間の肉体・精神には何らかの関わりがあるのではないかということが言われており、いまだその科学的な解明はなされていないものの、現在もその研究に努めている方も多い。
つまり、本来の四柱推命は、地球という天体上で活動しているヒトという生物に関わるすべての現象を包括的にとらえることのできる、東洋で生まれた生命科学とも言えるものであって、一般的に知られている占いとは、まったく異質なものなのである。
古代中国においては、どのような些細な出来事も自然の摂理を反映しており、必ずそこには理由と原因がある。無意味であったり偶然ということはあり得ないと考えられていた。これが「占」のおおもとの考え方である。
例えば、亀の甲羅を焼き、そこに偶然できたひび割れから神意をうかがい知ろうとしたり、蓍(し)という草の茎を束ねて数え、あまった蓍の数から、人の命運や世の中の動向を読みとろうとしたり、さまざまな苦心を重ねてきたのである。このような考え方や方法論は易占に今も色濃く残っている。しかし重要なことは、こうした呪術的な考え方はまったく無意味なことではあるが、その根底に、万物の霊長と言われるヒトといえども自然の一部でしかなく、そのすべては自然の摂理から一歩たりともはずれることはない、という思想が脈々と流れていることである。易占の原典である「易経」が、二千数百年の歳月を経ても、いまだにその価値を失うことがないのは、古代中国人の自然探究の成果がちりばめられているからではないかと考えられるのである。
四柱推命は生年月日によって人の命運を論じる方法であるから「占」の範疇にはいることになる。ところが日本において占いと言われているもののほとんどすべては、そして四柱推命と称しているものでさえ、自然との関わりを忘れてしまい、人が生き、生活しているという実態とはかけ離れたところで、無意味なパターン化に明け暮れ、観念論的な落とし穴に入り込んでしまい、理屈をこね回すだけに終始してしまっている。
以下中国を発祥の地とする、人の命運を論じる方法を説明していくことになるが、四柱推命独特の用語を、日常的に使用してる言葉に近いものに置き換えることができれば、理解しやすさを増すこともできるかも知れないが、理解しやすさを求めることのメリットより、古来よりの用語をそのまま使うことのメリットのほうが格段に大きいと考えるので、本書では、旧来の用語を使用することにする。そのため、本書の内容をご理解いただくには多少の忍耐が必要かもしれないが、最後まで読み通していただければ、四柱推命という、人間・ヒトを論じる新たな範略(カテゴリー)を構築していただけることと思う。
【 参考文献 】
赤塚忠訳・著 中国古典文学大系「書経易経(抄)」平凡社
萬民英著「三命通會」武陵出版社
徐子平著「路珠子三命消息賦註」武陵出版社
角田忠信著「続日本人の脳l大修館書店
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より