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キーワード:すでに成る

既済、亨小。利貞。初吉終乱。

〔大意〕この卦は非常にむずかしい卦です。キーワードは「すでに成る」ですから、あなたが今どんな状態であれ、こらから先の大発展は望めないことになる。では、この卦は悪いかというと、少なくとも成就の目があるのだからあながち悪いともいえない。このへんの解釈が難しいところです。

いわばあなたは満ち足りた状態にあるということになる。しかし人間の欲望は限いから、実際にいまのあなたが、 すべての点に満足しているとは思われません。そ要なのは、まずどんな現状であれ、その状態を丸ごと肯定することです。

現状を肯定した上で、次なる自己の計画や目標を立てる。それは大きくても小さいい。とにかく自分の夢や願望を具体的な目標や計画にまでデッサンすることですそしてその実現のためにできることから着手する。

このとき気をつけなくてはいのは、あまり張り切らないで徐々に進めていくことです。

時間はたっぷりある。計画へ向けて出発はするが、エンジンはフルにふかしてはならない。道は長いと思うべきです。いわばこれから長い期間の旅行に出るようなつもりで、ゆったりと構え、同時に新鮮な気持を持ち続けることです。

―つの峰を征服し第二の峰にとりかかった。だが、山道を登りはじめたが、いまは夕暮れで足元がおぼつかない。 まだ休む時間ではないが、あわてたり、あせったりとは禁物である。いまの状態はそういうものです。

一般的にはこの卦ははじめが良くて終わりがよくないといわれています。「終わりよければすべてよし」にするためには、けわしい下り坂をおりる慎重さをもって、上り坂に挑むことです。

 

◎運勢 好調の中に崩壊の兆が芽生えている。既済を得卦した時の対処法はむずかしく、動けば後に乱れ、泰平に泥んで奢移怠慢となれば蠱敗していく。とにかく艱難の時代を忘れないで十分備えを固めるべき時である。

◎願望 既に叶っている。将来にわたる長期的な願望は控えたほうがよい。

◎事業 新規事業の拡張は将来性がないので思い止まるべきである。現状の安泰を永く保つように心がける時で勢いにまかせて進むことは凶である。

◎結婚 すでに済っているので良占だが、終わりを万全にすべく心がける必要がある。

◎交渉事 はじめ順調、終わりは乱れる。将来をよく謀り知って対処すること。

◎家出人 戻りにくく、探しにくい。

◎待ち人 今は叶い来る。将来は待つことに骨が折れる。

◎病気 心臓・腎臓病のほかに性病やアルコール中毒など不摂生が原因する発病が多く、大体、慢性化しやすい。

 

  • 初9:時の勢いに負けてはいけません。

曳其輪、濡其尾。无咎。

其の綸を曳く。其の尾を濡らす。咎无し。

ニ・三・四は「坎」である。坎は車の象又狐の象とする。初九は車の輪を曳く象であり、又狐とすれば、その尾にあたる。小過は無事に過ごすことであるから、既済となって、人々は調子に任せて進もうとする。それは危ないと曳き止めることである。狐は水を済(わた)るに尾を揚げる。尾を垂れて濡らせば泳ぎ渡れないと言う(後漢・『風俗通義』所伝)

 

  • 二6:自分にも他人にも謙虚であり続けなさい。

婦喪其茀。勿逐。七日得。

婦、其の茀を喪う。逐うこと勿れ。七日にして得ん。

中正にして九五と正応する。妨害があっても棄て置けばよい。自然に解決する。勢い定まっているからである。

 

  • 三9:自分の心を平安にすることだけを考えなさい。

高宗伐鬼方。三年克之。小人勿用。

高宗(こうそう)鬼方(きほう)を伐(う)つ。三年にしてこれに克(か)つ。小人は用うるなかれ。

重大段階であるが、時間をかけて取り組むこと。小人は用いてはならない。これを誤れば「水雷屯」の卦となって、大いなる危難となる。

 

  • 四6:蛇のようにかしこく、鳩のように素直であれ。

繻有衣袽。終日戒。

繻(ぬ)るるとき衣(衣|如(いじょ)あり。終日戒(いまし)む。

既済の半を過ぎて、すでに変化の機を含む所である。十分なる注意を要する。この爻辞に舟に小穴があって水が浸入する。それを在り合わせのぼろで塞ぐという例を引いている。

 

  • 五9:船が難破しそうなら思い切って荷物を捨てる必要がある。

東隣殺牛、不如西隣之禴祭、実受其福。

東鄰(とうりん)の牛を殺すは、西鄰(せいりん)の(示|龠祭(やくさい)して、実(まこと)にその福を受くるにしかず。

既済の安定したかに見える時であり、上に立つ者は安心して驕怠の始まる時である。この時に於いて、よく情勢を比較検討して、神の嘉賞されるようであれば、実にその福を受けて、吉大いに来るであろう。

 

  • 上6:先のことを思いわずらうな。過ぎたことをくやむな。

濡其首。厲。

その首を濡(ぬ)らす。厲(あやう)し。

安定は久しきを得ない。油断をすれば首を濡らす沈没を招く。厲きを知らねばならぬ。

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)を参照しています。