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キーワード:豊富

豊、亨。王假之。宜日中。

豊は亨る。王、之にいたる。憂うるなかれ。日中によろし。

豊は豊大。勢いが大いに盛んな意、明(離)を以て動(震)き大いに亨通を得る卦象にとる。天下を豊かにして大いに盛んにするのは王(そこに君臨する者)がこれを致すのであるが、「日中すれば則ち戻く」で盛大の極ともなれば、衰兆の朋が訪れ来るのは当然である。しかし、いたずらにこれを憂うることはない。日の中天にある時に、成し得るべきことを大い成し遂げ、かつまた豊大さを持続することに心がければそれで宜しいのである。

 

 

〔大意〕豊(ほう)は「豊富」「実り多きこと」のことでこれはきわめて順調な卦ということができます。人間は誰でも豊かになりたいと願っているのですから、それをかなえてくれる状態を示して吉である。

問題はそれをどうやって現実のものとするかですが、マーフィー博士はこういっています。「まず、あなたの頭の中を豊富の観念で満たしてしまいなさい。そうすれば、あなたの思い描いた通りの現実に直面することでしょう。富を自分に引き寄せる方法はこれしかありません」

本当に豊かな人は豊かさを常態と考えています。貧しい人は貧しさを常態と考えています。豊かな人が豊かさを感じ、貧しい人が欠乏感を感じるのは当然のようですが、潜在意識の理論ではこれは逆なのです。

つまり豊かさを感じられる人が豊かになり、欠乏感を感じる人は欠乏するのです。「欠乏は避け難いという考え方を一掃しないかぎり、豊かにはならない」豊富の観念を抱くことの効用は、それが現実の豊かさへの第一歩であることです。

さいわいにしてあなたには「豊富」の卦が出ました。いまこそあなたは自分が満たされ、何不自由ない身になることを確信し、自分の計画を実行しなさい。それは成功するはずです。よく「よい卦が出たときは慎重に」といいますが、自分に正しさと誠実さの自信があれば、臆することも、周囲に気を使う必要も何もありません。

この卦の本文には「憂うるなかれ」と書かれています。良いことがあるときは素直に喜び、悪いことがあるときはへこたれずに希望を失わないのが、成功者に共通する資質であることを忘れてはいけません。

 

 

◎運勢 泰平、豊大に泥み、衰えに向かっている。一歩退いて泰に戻す心がけが大事である。

◎願望 思い通りに通達するが、これから衰運に向かうことを考慮してはかることである。

◎家業 思い通りに盛況を極めているようだが、すでに内実は伴っていない。進むことのみを専らとすれば危険な事態に陥りやすいから退守して内側を整備する心がけが肝要である。

◎結婚 成・可否ともに悪く考える占である。

◎交渉事 将来に継続する事柄は見合わせること。日常的な事でも強引な交渉は不和となりやすく、場合によっては訴訟問題も起こりやすいから注意して行なわなければならない。

◎家出人 勢いをもって妄動するから非常に危険とみなければならない。なお、戻りにくい占 でもある。

◎待ち人 期待外れに終わることが多い。

◎病気 呼吸器・心臓・肝臓などで急性のものが多く危険。腹上死なども考えられる占である。

 

  • 初9:心からあふれ出ることを口は語る。

遇其配主。雖旬无咎。往有尚。

爻辞に、「其の配主に遇う。旬と雖も咎なし。往けば尚(たっと)ばるるあり」とある。自分の配偶となる主人公であるから、通常九四とし、旬(ひと)しとは、その立場や使命をひとしくすると解せられるが、旬は均或いは釣ともなっており、遇うということからも、六二とする方が妥当と思える。初九は中正な六二に倣えば尊敬されると解した方がよくわかる。しかしこれは卜旬の旬であろう。次の伝の旬を過ぐるは災也とあるによっても明白と思うが、殷代から一旬(十日)一旬に占ったもので、一ぱい一ぱい、遅れてもよいからとにかく往けということに解した方が妥当と思われる。

 

  • 二6:悪に対して抵抗するよりも善に近づきなさい。

豊其蔀。日中見斗。往得疑疾。有孚発若、吉。

中正を守って新たな意義に富んだ生活を変わることなく、発達させてゆくことである。爻辞に其の蔀(ほう)を豊にす。日中・斗を見るとあるが、蔀は「しとみ」、或は蔀は灌木雑草の類とし、いずれにしても光を遮って昼尚暗く、その暗がりより明を見るから、日中斗星を見る訳である。豊の時はそれほど自ら晦まして、漸く世間のことがわかるのである。好い気になれば上から疑われ疾まれねばならない。

 

  • 三9:習慣を再点検し、良い習慣のみを残しなさい。

豊其沛。日中見沫。折其右肱。无咎。

調子に乗る時であるから、大切な右の肱ぐらい折りかねない。その沛(はい)を豊にすることである。沛は通説では蔀(しとみ)に比すべき旆(とばりばた)のこととするが、公羊伝に草棘を沛と曰い(何楷)、斉侯・沛に田(かり)すとあるが、蔀と同じく草木繁茂して、禽獣の匿れる所である。豊の互体は「風木」であり、約象では「澤」であるから、象も合う(応劭)とする説も興味が深い。

 

  • 四9:あなたには良い協力者があらわれます。

豊其蔀。日中見斗。遇其夷主。吉。

六二と同じ。ただ「其の夷主に遇う」という難解な言葉がある。この爻は陰の位にある陽で、雷の初爻である。上の六五に比して大いに慎まねばならぬ。夷は等し・平らか・常の意で、自分と同じような立場の公平な相手である。初九に配主と言っ ているから、相応じて夷主は初九である。初九と相待ってゆけば吉を解されている。初九の配主を私は二爻と解するから、九四の夷主も六二とする。爻辞もぴったり合う。

 

  • 五6:ツキがあることを確信すれば、それは現実のものとなる。

来章、有慶誉。吉。

右のようにして自らゆかしい韜晦の徳を積んでゆけば、ここに章(あらわ)されて慶誉がある。吉である。

 

  • 上6:物質的に恵まれる自分を実感しなさい。

豊其屋、蔀其家。闚其戸、闃其无人、三歳不覿。凶。

要するに豊は平和な繁栄ではなく、変の多い時態を前にしての、目につき易い栄えであるから、よほど警戒する所が無いと、大家ががらんとして薄暗く、ひっそりとして、人気もないというような廃墟の光景となり易いことを思い知らねばならぬ。

 

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)を参照しています。