夏が来れば「節電」、冬が来ればやっぱり「節電」、とそればかり口端に のぼっています。「もったいない」が文化になっている国ですから、「電気がもったいない」と言われると、「そうだね」と簡単に納得してしまいます。でも、これは本当に「正しい」ことでしょうか。
私から見ると、これは非常に怪しいのです。裏側に、隠された思惑がある、と思っています。なぜかと言いますと、それは、エネルギーはほぼ無尽蔵にあるからです。
例えば石油。1970年代の石油ショックの頃は、さかんに「すぐに枯渇する」と言われていました。日本中がトイレットペーパーを買い込むなど、パニックになり、「あと40年」という試算も出ていたほどです。石油ショックから40年経ちましたが、なくなるなんて話、まったく出ていませんよね? そうなのです。資源問題が専門分野である私の試算によれば、石油をいまのまま使い続けても、あと8000年は大丈夫なのです。
外国で講演するとまったく違う反応なのですが、日本ですと、「8000年? そんなことないよ」という反撃が来ます。私が「なぜ、8000年じゃないと思うのですか?」と聞くと、
「みんなが40年ぐらいと言っているから」と言うのです。
日本では「事実は事実で決める」のではなく、「事実は空気が決める」ということになっていますので、日本人の多くが、世間で何となく「石油はすぐ枯渇する」と言われていれば、それが事実になります。でも、それでは学者は不要ですね。学者というのは、当然ですが、一般の人が何と言おうと、自分の専門知識に沿って発言するのですから。それでは、学者として「8000年」という根拠を説明しましょう。
そもそも石油は、さまざまな生物の死骸が長い年月をかけて変化したものです。このおおもとは、炭素(C)です。46億年前に誕生した地球は、ほとんどが二酸化炭素(CO2)でした。
その後、ラン藻類のような、二酸化炭素を体内に取り込み、炭素だけ残したまま、酸素を放出するという生物が登場しました。そのおかげで、われわれ人間のような、酸素を取り込んで呼吸する生物が誕生したというわけです。炭素を体内に取り込んだ生物は、通常、死ぬと体外に炭素を放出するのですが、中には炭素を抱え込んだまま、死骸となって海底に埋まってしまうものがいました。これが、長い年月をかけて石油となったわけです。
地球が誕生したときには空気の95%がCO2だったのに、二酸化炭素が減って、酸素の割合が増えたということは、それだけ炭素を抱え 込んで死骸となった生物がいるということです。つまり、炭素の量を計算すれば、どれだけ石油があるか、大まかな総量がわかってしまうというわけです。私の計算からすると、いまのペースで消費しても、あと8000年は大丈夫なのです。石油などすべての天然資源を計算すると500万年より短いことはまずありません。
ではなぜ「あと8000年」が「あと40年」になってしまうのでしょうか。
実はカラクリがあって、「あと●●年」という数字は、「いま採掘している、あるいは石油メジャーがある作戦のもとに採掘可能な石油を公表している数字、それをもとに 計算すると……」ということなのです。故意に隠していたり(これがもっとも大きい)、新たに採掘可能な油田が見つかったり、それまで採掘が難しかったものが技術力で採掘可能になったりすると、一挙に「あと●●年」が増えるのです。つまり、「あと●●年」というフレーズは、石油で商売をしている石油産出国と石油メジャーにとって、都合がいいから使っているというだけなのです。
『「正しい」とは何か?』武田邦彦著 小学館より
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