29坎為水.jpg

キーワード 水(底知れないもの)

習坎。有孚。維心亨。行有尚。

(しゅうかんはまことあり。これこころとおる。ゆきてたっとばるるあり。)

「習」は重なる。「坎」は陥り難むこと。したがって、「習坎」は非常に困難なこと。「維」は一筋にの意味。「非常な困難の中にあって も、誠の心を貫きとおせば通じる。進んでいけば尊敬される」。この卦は困難を意味する水が二つ重なっております。した がって、坎為水の時は、アップアップと溺れかけて、四苦八苦の時です。しかし、これ以上落ちることのないどん底の時ですから、今こそ自分の真価が問われる 時と腹を据えて、日々の仕事を辛抱強くこなしていくことです。このような時こそ、立派な人は徳を積み、勉学に励んで内面を充実させ、志を捨てることなく将 来に備えるものです。会社では赤字経営、倒産などがある時です。また、水難、盗難、色難などには注意をする時です。

◎易の中では三大難卦の一つです。

 

 

 

〔大意〕この卦はよくないほうの代表格とされています。何をやってもうまくいかない。ただ耐えて、時期の来るのを待つしかないという救いのない卦です。

水また水で周囲に水があふれ、進退きわまれり、前にも説明した通り炊(かん)には水とか底の知れない危険という意味があるから、その炊が二つも重なるこの卦が出たとすると、誰もが消極的な気持になることでしょう。

たしかに無謀な事はこの時期さけるほうが賢明です。しかし、こういうときこそチャンスはその底にひそんでいると見ることもできるのです。運の良い悪いは他動的要因でくるものではない。

それは自分が望んだ結果である、という考え方があります。

この考え方に従えば、この卦が出たことで消極的になれば、大きな災いは避けられるかも知れないが、大きな成功もまた遠ざけられることになる。ところが世の成功者というものは、不運のとぎ逆境のときに幸運の目を発見し、育てていることがほとんどです。

極端ないい方をすれば、不運に遭遇しないで幸運をつかんだ人はいない、といっていいくらいです。その意味でこの卦はあなたの一大飛躍のチャソス到来と積極的に解釈するべきです。

底が知れないということは、必ず悪い結果が出るとはいえないことを暗に語っている。人知のおよばない何かがある。『易経』に「行けば尚(たっと)ばるることあり」とあるのに注意する必要があります。

人と同じことをしていたのでは人並の結果しか得られない。ここは一番思い切って攻勢に出てみるのも―つの方法です。人に評価されるということは、現代社会では「成功」を勝ち得る必須条件である。

その意味でもこの卦が出 たときの態度いかんが、後のあなたの人生を左右するといっていいでしょう。

 

 

  • 初6:あなたが疑ったり迷ったりするときチャンスは逃げていく。

習坎入于坎窞。凶。

(しゅうかんかんたんにいる。きょう。)

「習坎」は非常に困難なこと。「坎窞」は穴のまた穴の中のこと。「非常に困難な時、深い穴の底に落ち込んだ。凶」。どうしていいかわ からず暗中模索の時です。坎為水の中でも、まさにどん底の今、下手にもがかず静観するべし。

◎あなたの考え方、進み方に問題点があります。よく反省し、改めましょう。

 

  • 二9:どんな事柄でも人に強制してはならない。

坎有險。求小得。

(あなにけんあり。もとめてすこしくう。)

穴の中に落ち込み危険である。努力すれば少しは得るところがある」。困難の中で、どうにか打開策の見出せる時です。努力すれば小さな 願い事は叶うでしょう。ただし、現状維持が基本。

◎坎為水の中では良い時です。

 

  • 三6:途方にくれたとき、回答をあせってはならない。

來之坎坎。險且枕。入于坎窞。勿用。

(きたるもゆくもかんかん。けんにしてかつよる。かんたんにいる。もちうるなかれ。)

「枕」は止まること。「坎窞」は穴のまた穴のこと。「進むも穴、退くも穴また穴で地獄である。危険極まりなく止まったが、深い穴の中 に落ち込んだ。行動を起こしてはならない」。どう動いても危機が迫って、途方に暮れる時です。当分の間、甲羅に隠れる亀となるべし。

◎あなたの考え方、進み方に大きな欠陥があります、よく反省し、方針の転換をしましょう。

 

  • 四6:光は正しい者の前には暗黒の中からもあらわれる。

樽酒簋貳用缶。納約自牖。終无咎。

(そんしゅきじふをもちう。やくをいるるにまどよりす。ついにとがなし。)

「簋」は竹の器。副え物。「缶」は素焼きの器。「約」は質素な物。「牖」は明かり窓のこと。「一杯の樽酒と竹の器に盛った副え物、素焼きの器を用いる。こうした質素なものを差し出す時に、正門からではなく明かり窓から入れる。最終的に問題はない」。質素に内輪に事を運び、誠意をもって行なうことです。虚礼は不可。

 

  • 五9:不正の利をむさぼるとき家は乱れる。

坎不盈。祇既平、无咎。

(かんみたず。すでにたいらかなるにいたる。とがなし。)

「水があふれていたのが平らになる。問題はない」。困難が底をつき、前途に希望の光が見え始めた時です。今は土台を平らかに固めるこ とに全力投球することです。

 

  • 上6:自責の念は最大の牢獄である。

係用徽纆。寘于叢棘。三歳不得。凶。

(つなぐにきぼくをもちう。そうきょくにおく。さんさいえず。きょう。)

「徽纆」は寄り合わせた頑丈な縄のこと。「叢棘」はいばらに囲まれた牢獄のこと。「頑丈な縄につながれ、いばらに囲まれた牢獄に閉じ 込 められる。三年たっても脱出できずに凶」。重刑に処せられるほど人の道に外れたことを続けてきたのではありませんか。いつまで続くかわからない困難の中で 身動きの取れない時です。天罰と覚悟するべし。

◎あなたの考え方、進み方に大きな欠陥があります、よく反省し、方針の転換をしましょう。

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)及び以下を参照しています。

http://www.keisho.server-shared.com/64/k29.html