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キーワード 大きな抑制力

大畜。利貞。不家食吉。利渉大川。

(たいちくはていによろし。かしょくせずきち。たいせんをわたるによろし。)

「畜」はとどめる、蓄積すること。「山天大畜の時、貞正であれば良い。家で飯を食うのではなく、世間に打って出て吉。大川を渡っても 良い」。山天大畜の時は、文字どおり大いに蓄積基盤のできた時ですが、社会への飛躍に備え、さらに実力や知識を内部に蓄えることです。そのためには、家の 外に出て、社会の荒波に大いにもまれるべきです。そして、これまで蓄えてきたものを遺憾なく発揮する日を待ちましょう。辛抱強く自分を磨きながら、大川を 渡る時期を見極めることが大業を成し遂げる上で大切です。

 

〔大意〕この卦は大きな停滞を意味します。しかし運勢としては停滞に続く上昇を含んでいるので、停滞が悪いということではありません。

いまは耐え忍ぶ時期であり、失望せず、期待に胸をふくらませて、目の前の事柄をコッコッと処理していくことが大切です。実際、人生の現実場面というものは、雑事の連続です。一つひとつとれば実につまらない仕事がいくらでも出てくる。「自分の才能はこんなことをするためのものではない」「もっと大きな事に挑戦してみたい」と思うこともあるでしょう。

しかし小さい仕事、つまらなく見える仕事の中に、実は大きな仕事を成し遂げる芽がかくされている。大きな仕事も小さな仕事の積み重ねなのです。小さな仕事がきちんとできない人に大きな仕事などはとてもできるものではない。こう考えてくると、いかにつまらなく見える仕事でもそこに意義や価値が見えてくるものです。

停滞を好ましくないと考えることは当然ですが、大きな停滞には停滞という文字からは想像のできない深い意味があります。たとえば、文明の進んだ国の尺度ではかれば、インドやアフリカの情況は停滞以外の何物でもない。しかし、その文明もたかだか二千年の間につくられたものでしかない。これを宇宙の尺度ではかれば、すべては相対的な価値観となり、どっちが進歩でどっちが停滞かわからなくなる。

身近な例でいえばわが国の高度成長が終わった段階で、これからは苦難の時代がくるといわれた。石油もなくなるといわれた。それから十年以上たったが、あの時代から比べて停滞といえる現在の庶民の生活ぶりはどうかといえば、それほど 悪くはない。これは大きな停滞に処する術をわれわれが知ったからです。

 

  • 初9:嵐の大海に出るより、沿岸を航海するほうが良い。

有厲利已。

(あやうきありやむによろし)

「已」は止まること。「まだ危なっかしいところがあるので、天下に打って出てはならない」。機が熟していないので、まず内面の充実 を 図ることです。

 

  • 二9:車輪を取 はずされれば走行はできない。

輿説輹。

(よふくをとく。)

「輿」は車。「輹」は車軸のこと。「車の車軸を外して車を止める」。実力が蓄えられてきても、今は踏み止まって現状を維持することで す。

 

  • 三9:境遇や環境のせいにするのはやめなさい。

良馬遂。利艱貞。日閑輿衛、利有攸往。

(りょうばおう。かんていによろし。ひびによえいをならえばゆくところあるによろし。)

艱貞」は困難に耐えて貞正を守ること。「輿衛」は天子の車を守護する武術のこと。「馬に乗って懸命に走る。困難に耐えて貞正を守るが 良い。毎日武術の練習をする。進んで良い」。あなたの実力にさらに磨きをかける努力をすることで、上の人にも大いに認められる時です。今の頑張りが後に実 となり、花となるのです。

◎良い時です。

 

  • 四6:努力をしない努力が功を奏するときである。

童牛之[牛告」。元吉。

(どうぎゅうのこく。げんきち。)

[牛告]は角木のこと。「子牛のツノに角木を縛りつけ、突き当たる危険を予防する。大いに吉」。多少の束縛はあっても、とんとん拍子 に事の運ぶ時です。ただし、事の始めには注意を払うこと。

◎大変良い時です。

 

  • 五6:内にある物的欲望を制御せよ。

[豕賁]豕之牙。吉。

(ふんしのがきち。)

「[豕賁]豕」は去勢したいのししのこと。「去勢したいのししは、牙が残っていてもおとなしくて危害を加えることはない。吉」。多少 の束縛はありますが、かなり実力のある人でも無理なく従わせうる時です。

◎大変良い時です。

 

  • 上9:あなたはぼんやりしていることも必要である。

何天之衢。亨。

(なんぞてんのくなる。とおる。)

「衢」は四方八方へ通じる要路のこと。「天の要路を四方八方へかけめぐる。通じる」。今や、じっくり蓄積してきたものを思う存分発揮 でき、長い間希望してきたことが叶う時です。大川を渡ろうとするあなたを妨げるものは何もありません。

◎大変良い時です。

 

 

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)及び以下を参照しています。

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