この九つの星につけられたのが、さきほども触れた九つの名まえだったのです。それをもう一度ならべてみます。

 

一白水星

二黒土星

三碧木星

四緑木星

五黄土星

六白金星

七赤金星

八白土星

九紫火星

 

 

よく見ると、肉眼で見える天上の五つの惑星のうち、土星が三度、金星が二度、木星が二度、水星と火星が一度ずつここに願を出し、そしてまた白、黒、碧、緑、黄、赤、紫という七つの色があらわれていることもおわかりでしょう。

この五つの惑星や七つの色がなぜ出てきたかという問題については、専門的になりますから、ここでは説明を省略します。いちおうこの九つの星の名まえは、固有名詞のようなものだと考えておいてください。

また、これから後の解説では簡便のために「一白」「二黒」「三碧」「四緑」「五黄」「六白」「七赤」「八白」「九紫」というように、上の二つの文字だけで呼ぶことにします。

さて、この九星という考え方は、いろいろに発展し、整備され、「九星」という一つの体系にまとめられてゆきました。

つまり、古くから中国の人びとは、人生上のいろいろな失敗や成功、事故や災害栄逹や没落をくりかえし経験し、その経験をつみかさね語り伝え、因果関係を考え、そのなかから知恵を獲得し、またその知恵をためし、そして試行錯誤をくりかえしながら、そのなかに、ある種の法則性を発見し、それを「九星術」という形でまとめあげたのだと言えます。

「方位学」は、その「九星術」のなかの、もっとも主要な一分野で、「方位学」の理論はすべて、この目に見えない九つの「方位の星」をもとにして組み立てられているのです。

いわば、「方位学」は、何千年もまえから積みかさねられた中国人の実践哲学の―つのあらわれであるとも、苛酷な運命に翻弄されてきた庶民の生活の知恵であるとも言えるでしょう。

 

 

◎出典 「改定方位学入門」高木彬光著 カッパブックス及びブログ作者の収集データーによる◎