就職とか受験とかのように、自分の社会的な立場を大きく変えようとする場合には、とうぜん吉方を活用すべきです。もちろん、吉方はどれを使っても、全般的に良い効果をあらわしますが、仕事の性質によって、その効力にも微妙なちがいがあらわれてくるのです。
あなたがはでな性格で、とくに社交性を活かした仕事につきたいなら、八白の星のいる方角に当たる職場を選ぶのが最善です。芸能・芸術に関係のあるような仕事にしても、同じようなことが言えます。忙しさという点ではたいへんなも のです。体が三つほしいなと悲嗚をあげるようなことにもなりかねませんが、そのかわり一日一日の生活はしごく充実していて、生きがいを感じさせるでしょう。
女性の水商売の場合でも、この吉方は最善なのです。たとえばホステスが店をかえるような場合に、この方角の店を選んだら、とたんに収入倍増というようなことになるでしょう。
また女性の場合、この方角では異性運にもめぐまれます。働いているうちに、良い相手にぶつかって、人にうらやまれるような結婚に進展していく可能性も強いのです。
私の知っている七赤生まれの女性で、四十を越してからたいへん苦労した人がいます。高校生の長男をはじめ男二人、女一人の子持ちでしたが、突然ご主人に死にわかれ、借金もあったので、家屋敷まで人手に渡さなければならなくなったのです。
私も相談をうけたときには困ったのですが、へそくりか何かで、半年から一年ぐらいはどうにか食いつなげるというも のですから、とにかく、吉方を選んで勤めてみてはどうかとすすめました。
それで、この人は、八白の吉方に当たる料理屋へ働きに出たのです。ところがそこで三ヵ月ほど働いたあとで、ばったりある金持ちの男にめぐりあったのだそうです。そのあとは男女の仲ですから、ごくありふれたコースをたどったと言えばそれまでの話ですが、この人がおどろいたのは、彼の誠実さだったそうです。
自分は女房も子どももいるから結婚できないというせりふは、男としてはごくありきたりの逃げ口上のようですが、その後はちゃんと生活の面倒を見てくれ、店もやめさせ、かなりの家に親子をいっしょに住まわせてくれて、あとは子どもの教育に専念しろと言ってくれたそうです。
いわゆる二号族だと言えばそれきりですが、三人の子どもでさえも、実の父親以上になつき、ぐれかけていた思春期直前の娘でさえ、逆にまじめになってきたというのですから、人生というものは、修身の教科書に出てくるような、かたくるしい理屈だけでは割り切れません。
この人の親類でさえ、最初のうちは「もの好きな男もいるもんだな。若いホステスでも相手にしたほうが、よほど楽しいだろうにな」などとかげ口を言っていたそうですが、さすがにこのごろでは、沈黙してしまったということです。
この人は、あるとき私に言いました。
「うちの子どもはママには感謝しないが、おじちゃんの恩義は一生忘れないと言っているんですよ。まったくどういうんでしょう?」
◎出典 「改定方位学入門」高木彬光著 カッパブックス及びブログ作者の収集データーによる◎