男性の場合も、収入その他の条件ではたしかにめぐまれるのですが、永続性に欠けるのが欠点です。それに仕事が忙しすぎて、健康を害するおそれもないではありません。
六白の星のいる吉方をちょっと弱くしたような感じが七赤の星のいる吉方の特長です。この場合、目先の条件は六白にくらべればちょっとおちるかもしもれませんが、はでな感じはともないますし、忙しいといっても健康を害するほどではありません。少し長い目で見るつもりなら、こっちの吉方を使うほうがいいかもしれません。
数年まえ、私が「丸正事件」の特別弁護人として法廷活動に忙しかったとき、宮城刑務所から出獄してきた五黄生まれの男に会ったことがあります。若いころ、不良少年からヤクザの仲間にはいり、人を殺して何年間か宮城刑務所で服役してきたというのですから、世間の標準ではちょっと立ちなおりはむずかしいと考えるのが常識でしょう。しかし私は、何度か会って話をしているうちに、案外小心で純真な性格だなあと思いました。五黄の星が持っている一本調子の性格が、当時の環境の悪さから、歪んであらわれたのでしょう。
それからまもなく、就職の話を聞きました。私が直接世話をしたわけではありませんが、勤め先はその年七赤の星のいる方角だったので、これならば立ちなおれるのではないかと思っていました。それから数年、彼はまじめに慟きつづけ、その腕と人間を買われて、小さいながらも、この会社の重役におさまるようになったのです。もちろん、社長にしたところで、最初から彼の経歴は百も承知で採用したはずですし その点でもりっばな人物にちがいありませんが、その期待を裏切らない慟きを見せた彼にしても、みごとな更生ふりだったというほかはありません。
悪に強い人間は、普にも強い――という言業どおり、五黄生まれの一本気な性格が両面に発揮されたのがこの例なのです。
ただこのとき、彼が凶方へ就職したら、おそらく今日のようなところまでは来られなかったでしょう。またしても不遇な境遇に追いこまれ、罪をくりかえすようになったのではないかと、私はときどき考えるのです。
◎出典 「改定方位学入門」高木彬光著 カッパブックス及びブログ作者の収集データーによる◎