◎ 節約と消費——国家のお金と家計のお金は分けて考える ◎『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より

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◎ 節約と消費——国家のお金と家計のお金は分けて考える ◎

世界には約60億人を越える人たちが生活をしている。その一人ひとりは、それぞれ自分、家族、国家、そして世界を考えながら、それぞれの人生観や価値観に従って生きている。
たとえばここに「節約が大切」と思っている人がいるとする。その人がなぜ「節約が大切」と思っているのかはハッキリしない。普通に考えると「お金を貯めたい」のか、「地球環境を考えてのこと」かどちらかだろう。でも、この二つは「個人の損得」と「地球環境」という全く違うものだからかみ合わないはずだ。
ある人(A さん)が「お金を貯めたい」と思って「節約」をしたとする。昔なら銀行が発達していなかったので、節約して余ったお金をタンス預金していたかもしれないが、いまではほとんどの人が銀行に預けるだろう。
銀行に預けたお金は銀行の金庫に入っている訳ではなく、直ちに貸し出される。銀行預金の利子がどんなに少ないといっても、利子がつく。一方、銀行は町の一等地に店舗を構え、冷暖房や霜灯をつけ、世間の平均より高い給料をもらっている銀行員が働いている。
かなりの経費がかかるのでいくら利率が低くても、預金されたお金を運用しないとやっていけない。
かくして銀行はできるだけ金庫のお金を減らして貸し出ししようとするのは当然である。
つまり、節約してお金を余し、それを銀行預金すると、そのお金はすぐ別の人が使う。銀行の本来の働きは、社会で余剰となったお金を預かって、それをお金が必要な人に回すことによりお金の効率的な利用をはかることにあるわけだから、社会の正常な働きである。
仮に一年ほど銀行にお金を預けたAさんが、銀行から引き出して自動車を買ったとする。
そうするとAさんが節約したと思っているお金は、銀行から借りた人が使い、Aさんも使うので二度使われる。つまりAさん個人も節約したことにはならないし(お金を使う時期がずれただけ)、社会はAさんが節約した分だけ2倍の消費をすることになる。
Aさんは日頃から「私は環境が大切と思うから、タクシーに乗らずにバスを利用するのよ」と言っていた。彼女がタクシーに乗ればそれだけお金を使うので、預金もできなかったであろう。となれば排気ガスを発生する自動車を買うこともなかったはずである。彼女はいったい、何を考えているのだろうか?

『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より R080928

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おてんとうさまの下で
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