◎ 締め切りを少し早めに設定する ◎『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より

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◎ 締め切りを少し早めに設定する ◎

考えてみれば誰もが期限に追われている。商売をしている人は支払期限に追われているし、学生はレポート提出期限だ。学者にとっては論文、主婦は夕食というようにみんな期限に追われている。
これも30代のときにある人に会い、その人の行動を見ていて気づいたことである。
ともかく期限より3日、4日前に仕事を終わっている。それから、一日10本ほど吸うタバコをくゆらせてのんびりとしている。
あれから20年、今でもその時のその人の顔がハッキリと思い浮かぶ。タバコの煙がゆっくりと立ちのぼっていく様子も覚えている。
それからニコッと笑い、「さて」という風に腰を上げてタバコの火を消して次の仕事に取りかかる。次の仕事といっても平凡なサラリーマンにはそれほど自分で決める仕事もない。だから、溜まっていた片付けなどをしていた。すぐ、次の仕事が来る。「はい」といって彼は立ち上がり、そして同じように淡々と仕事を始めるのだ。
彼に会う前の私は「期限が近づかないとやる気が盛り上がってこない人間」だった。今から考えるといろいろなことが思い浮かぶ。たとえば、それまではどうも自分の人生でありながら他人の人生だったような気がするし、何をやっているのかわからないところもあったようだ。
他人に動かされる人生も悪くはない。その方が気が楽といえば楽だ。でも、いつもそれでは何となく自分の人生が自分のもののような感じがしない。ちょっとだけでも自分の時間を自分のものにするためには、自分で自分のことを決めた方がよいだろう。
そこで、私も彼を真似してみることにした。
やることにあまり意義を探さないこと、期限を少し早めて生活すること、この二つが気軽な人生を送るのに欠かせないことだとわかったのだ。
でも、決められた期限の少し前に、自分で期限を区切るということは、かなり多くの人がやっている。そんな人でも、一応、自分としての期限を決めたものの、頭の中にはもう―つの期限、つまり本当の期限が入っているのが普通だ。私も最初はそうだった。
たとえば、10月10日期限の原稿を、一応、10月5日に自分の期限を決めるのだが、そうはいっても自分の頭の中には「10日」という数字が入っていて、イザとなったら「最後の5日間の頑張り」に期待していたところがあった。
そんな覚悟であると、結局、ギリギリの9日になって慌てて残りを片付けることになり、大いに反省することになる。そこで、とにかくなにがなんでも一週間前には完全に仕上げるように覚悟を決めた。
「自分で決めた期限を守る」というぐらいはできそうな感じだが、不退転の決意で方針を貫こうとすると、思わぬ伏兵に遭うのは世の常だ。
まず、実際の期限がさらに先にあることがバレるとみんなが協力してくれない。

『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より R080922

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おてんとうさまの下で
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