◆ グローバリズムの暴走を止める国 ◆
多様で持続性のある社会に反する「グローバリズム」の暴走に歯止めをかける可能性がある国があるとすれば、それは日本です。
日本の特長としては、まず「他国との争いを望まない」ということが挙げられるでしょう。
日本は歴史上、対外戦争数がとても少ない国です。飛鳥時代の白村江(はくすきのえ)の戦い(663年)※31、
鎌倉時代の元寇(げんこう)(1274年、1281年)※32、豊臣秀吉の朝鮮戦役(1592年、1593年)※33、そして19世紀の終わりに起こった日清戦争(1894ー1895年)※34 、この4つが日本の対外戦争となります。
近代に入ると、日露戦争と第一次世界大戦、日中戦争と第二次世界大戦がありますが、これは欧米列強国の覇権争いに日本が巻き込まれたかたちで起こったものです。
2つめの特長は、日本人の「集団性」です。
私が専門の工学の話をすると、例えばアメリカのある大企業で研究を指導しているのは、博士号を持ったいわばドクターです。そのドクターたちが計画を立案し、新しい製品の製造法なり、具体的な機械の設計なりを決めて、それを現場に通達します。現場はそれを受け取り、それを現実にするために働きます。
私がアメリカに行くと、待っているのは博士号を持ったエンジニアです。仮に私が博士号を持っていない場合は、相手にしてもらえないということが起こります。
アメリカの企業では階級が二極化しています。創造的な仕事は博士号を持った人が担当し、経営陣と打ち合わせをし、新しい製品を生み出します。それを受けて、現場の人が動き出すというシステムになっています。
しかし日本では違います。私が博士号を持つ研究所長であったとしても、常に現場の意見を聞いて立案をし、現場と一緒に改善します。経営陣とも打ち合わせをしますが、それはあくまでも現場の代表として話をしているだけであって、新しいものを創造したりするのは経営者側ではなくて、現場側です。
したがって日本は集団主義であり、改善主義であるということが言えます。
現在(2024年10月)、日本製鉄がUSスチールを買収するという話で大変に話題になっています。かつては日本の鉄鋼会社はUSスチールにも全然及ばない小さな規模でした。鉄鋼というものは大規模生産ですが、集団でやるような中小企業的なところを多く含んでいます。
改善を進めている間に、いつの間にか日本製鉄がアメリカの大会社を抜いたのです。これは、自動車業界のトヨタも同様です。
3つめの特長は、日本人の「宗教観が穏やかである」ということです。
人類は宗教の力によって発展してきたことは間違いありませんが、その一方では宗教観の違いによって世界中で大きな対立を生み出しました。
日本古来の宗教とされる「神道」には教えがありません。宗教とは「主な教え」ということですので、その意味では神道は宗教ではないとも言えます。「教祖」「聖典」「戒律」が宗教の3要素と言われることもありますが、神道にはそのいずれもありません。
日本人の多くは、子どもが生まれたときには神社(神道)を参拝し、葬式は寺(仏教)で行います。クリスマス(キリスト教)を祝ったかと思うと、年末は寺に除夜の鐘をつきに行き、翌日の新年には神社へ初詣するという、非常に柔軟な宗教観を持っています。
一神教は非常に厳しい自然環境から生まれた宗教なので厳格さを求められますが、日本のように豊かな自然に恵まれた国で信仰されてきた宗教は穏やかになるのです。
こうした日本の3つの特長を世界で実践することができれば、「戦争や宗教上の争いもない、まとまりのある社会」をつくることができます。
先の大戦では、日本の力が発揮されました。当時は欧米列強の数力国が世界中の有色人種の国や地域を支配していました。実質的に独立を保った有色人種の国は日本だけであり、そこへ欧米列強(主に、米英蘭)が製いかかってきて大戦が勃発しました。
日本は形式的には敗北していますが、アメリカ、イギリス、オランダも大きく傷つきました。戦後、アジアやアフリカ諸国が次々と独立し、欧米列強による植民地支配が終焉(しゅうえん)したのです。
※31 白村江の戦い
663年10月に朝鮮半島の’11村江(現在の錦江河11付近)で行われた百済復興を目指す倭国・百済道民の連合軍と唐・新羅連合軍との間の戦争。海上・陸上戦ともに俊国・百済連合軍が破れ、百済復興勢力は崩壊した。
※32 元寇
日本の鎌倉時代中期の1274年・1281年に、モンゴル帝国(元朝)および属国の高麗によって二度にわたり行われた対日本侵攻。i度日を文、水の役、一度目を文永の役と呼ぶ。神風と呼ばれた台風などの影響もあり、日本巾は一.度とも几軍に勝利した。
※33 朝鮮戦役
l592年に始まって翌1593年に休戦した文禄の役と、1597年の講和交渉決裂によって円聞されて1598年の太閤既臣秀吉の死をもって日本軍の撤退で終結した慶長の役とを合わせた戦役の総称。戦役後の和平交沙により日本と朝鮮は国交を回復した。
※34 日清戦争
l894年7月2511から1895年4月17日にかけて日本と箭国の間で行われた戦争。日本側の勝利と見なす11泊講和条約(下関条約)の調印により終結したが、講和直後の三国干沙により日本は遼東半島を手放すこととなった。
「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房 令和6年刊より
R080810

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