●大昔から人間はダイオキシンに接しながら生きてきた
人間が登場するとさらにダイオキシンができやすくなる。人間はかつて「たて穴式住居」というところに住んでいた。地面に穴を掘り、その上に藁を組んで、家をつくり、その家の中心には「囲炉裏(いろり)」を置いてそこで暖をとったり食事をするという生活をしたのである。
日本では昔から伝統的に囲炉裏があり、そこで薪や炭などをくべながら生活をしていた。もちろん、部屋の中は煙だらけになり、柱や梁は黒くなる。その中にはダイオキシンがかなり含まれていただろう。
ダイオキシン騒動は伝統的な生活さえも破壊してしまった。ここ最近、日本の役場に寄せられる苦情の上位は「隣の人がたき火をしているからダイオキシンが出て危ない」というものである。
何ともおかしな国になったものである。
そんなことを言っていたら昔の囲炉裏はどうなのか。たて穴式住居の中で魚を焼いたり肉を焼いたりしていたのに、なぜ死ななかったのか、ということになる。

いずれにしてもダイオキシンというのは普通にものを燃やせば不可避的にできるので、大昔から人間はダイオキシンに接しながら生きてきた。だから、もしもダイオキシンが人間にも微量で強い毒性を示すなら確実に犠牲者が出ていたはずである。
しかし、幸いなことにダイオキシンで死んだ人はおろか、病気になった人すら日本にはいない。
『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦 洋泉社刊 2007年
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