●ダイオキシンは自然界に普通にあるものであり、数億年前から地上にあった

お米は、お米をつくる人のためだけとか、農協のため、または政府のためにつくっているわけではない。日本のお米は、日本の庶民が食べるためにつくっている。
だからこうした事実は必ず報道しなければいけなかっただろう。しかし、幸いにしてダイオキシンの毒性は低く、しかもあまり人体に蓄積しなかったので、日本人が全滅することもなかったというのが真相である。
ダイオキシンが騒がれた頃、ダイオキシンは魚介類に蓄積されて減らないと言われたが、それは厳密には違う。
図表2-2に示したように水田にダイオキシン入りの農薬を使わなくなった後から、ダイオキシンも減っていて今では魚介類からもあまり検出されない。

筆者はダイオキシンが毒であっても毒でなくても、もし体内に蓄積するようなことがあったら、将来、問題になるかもしれないと心配していたので、生体への蓄積がないことを示すこのデータは安心させるに足るものであった。しかし、あとから冷静になってこのデータを見ると「体内に蓄積しない」というのは至極当然のことでもあった。
多くの人はダイオキシン関連情報が報道された頃、「ダイオキシンは極めて特殊な化合物」であると錯覚した。何しろ「人類史上、もっとも強力な毒物」などと言われるものだから、そんなものが大昔からあるはずもなく、新しく誰かがつくり出したのだと思っていた。そんな得体も知れない化合物なら動物の体内でも「処理できずに」蓄積するかもしれないと心配したのである。
ところが、ダイオキシンは自然界にも普通に存在するものであり、数億年前から地上にあることがわかってきた。
まったく人騒がせなものである。リサイクルと同じく環境問題にはなぜこんなにウソが多いのだろう。
ダイオキシンが数億年前からあるのなら、通常であれば進化の過程で生物はその処理ができるようになっているはずだと考えられる。なぜなら、もし自然界にあるもので生物が処理できず、猛毒だというのなら、これまで数億年の間にダイオキシンは動物の体内に蓄積し、そのために全滅の危機に瀕しているはずだからである。
さらに、ダイオキシンの毒性が非常に高く、お米にも残留し含まれていたとなると、日本人は多くの人がダイオキシンの犠牲になるはずだった。ところが、いわば「ダイオキシン入りのご飯」を20年間も食べ続けた日本人は、誰も死ななかったどころか、患者さんも出なかった。

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦 洋泉社刊 2007年
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